水害と復旧工事

今年の夏は、各地で水害が発生してしまいました。私の住む東金市でも、8月13日の「令和8年千葉豪雨」で被害を受けました。私の事務所兼自宅は、前面道路こそ冠水したものの浸水被害は免れました。夜中から、雷と豪雨が数時間続き眠れないほどで、膝まで冠水した前面道路の水は昼過ぎまで引くことはありませんでした。このエリアは田んぼが貯水機能を果たしているため、ある一定ラインから水位が上がることはないのですが、区画整理地や大規模団地の調整池周辺では、駐車していた車が被害を受けました。がけ崩れなどによって交通網は寸断され、復旧が進まないうちに9月7日の豪雨が重なり、同じエリアが再び被害を受けてしまったのです。

そのような中、K建設様のOB施主様から、床上浸水被害を受けたと連絡が入りました。2~3日で最低限の生活ができるようにはしたのですが、完全復旧させるには、数か月の時間と数百万円以上の費用がかかる見込みです。火災保険の水害補償には加入していなかったため、自己負担の大きさに頭を抱えていらっしゃいます。一般的に、水害復旧工事は被害者にとって迅速な対応が求められますが、残念ながら「復旧には時間がかかる」ことが業界の常識になってしまっています。被災経験がないだけに、施主様も施工側も冷静な判断ができず、どんどん水を撒き、泥を捨て、消毒をして、濡れた建材を解体していくといった作業を行ってしまうのが現状です。

これほど全国で被害が相次ぐ中、地域密着の住宅会社には「水害復旧工事」という重要な役割があるのではないでしょうか。特に、新築工事を請け負ったからには地盤面の設定や基礎高、外構工事の設計など、事前に対策を打つことができ、お客様はそれを信頼して契約するからです。もちろん、想定を超える異常気象に対応し続けることは容易でないかもしれませんが、住まいを将来にわたって見守る姿勢が必要だと考えています。そのためにも、万が一の際に早期復旧を可能とするノウハウを持つことは必要ではないかと思っています。

その第一人者である信州大学の中谷岳史助教が提唱しているのが、「工務店が行う水害からの再建支援」です。日本木造住宅耐震補強事業者組合(木耐協)の全国大会において、被災者の不安や疑問に真正面から向き合いながら、水害復旧における工務店の役割について具体的に講演いただきました。特に、「床があるか」「自宅で風呂に入れるか」が、被災後の精神状態を大きく左右する点を挙げ、生活再建を最優先に考える姿勢の重要性を強調されています。また、床下は泥出しよりも乾燥を重視する合理的な手法など、現場で即実践できる知見が共有されました。さらに、水害対応はボランティアの善意に頼るのではなく、工務店が備えるべき事業分野であるとの考えも示されています。ありがたいことに、10月24日に開催される木耐協の「消費者セミナー(事前登録・無料)」で再度ご講演いただく予定です。ぜひとも、工務店様に聴いてもらいたい内容です。

私はこれまで、リフォーム工事受注の差別化として「命を守るリフォーム」や「性能アップリフォーム」を勧めてきました。まず取り組むべきは、耐震や断熱の技術力を磨くことだという考えに変わりはありませんが、復旧工事への対応力は大きな差別化になると思い始めています。自然災害は、被害が一時に数十棟に及ぶこともあり、お客様は生活再建への不安だけでなく、復旧の遅れによる大きなストレスを抱えることにもなります。その苦しい時のお役立ちは、大きな信頼につながり、永続的なお付き合いになると考えられます。「家守り」が工務店様の本業である以上、復旧工事は必要不可欠ではないでしょうか。

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