60歳代が自宅のことをどう考えるか


60歳代になると、子育ても終わりに近づき、住宅ローンも終了を迎えます。一般的な会社員であれば、住まいを持ち、退職金も入り、年金を受け取れる年齢になります。定年を迎えた友人たちに財産について質問をすると、「自分たちのために資金は使い切る」と言います。確かに、アンケートを取ると、「自分たちのために、旅行や趣味を楽しむ」「子どもには残さない」と言うのですが、一方で「将来、この自宅をどうするか悩んでいる」「子ども家族は引き継がないと思う」とも言うのです。子ども世代も、「親が自由に使ってほしい、残った資金だけの相続で良い」「実家はいらない」という結果になっています。

ところが、資金を使い切りたいと思っているにもかかわらず、住宅への投資は少ないのが現状です。断熱性や耐震性が不足しているとわかっていながら、我慢して住み続けているのです。子どもたちも、「実家を相続しても、住まない」からと、実家の将来のことは考えないようにしています。

この60歳代のアクティブシニア層を動かすには、まずは「稼げる住まい」にリノベーションすることです。相続後も稼げるとわかれば、子どもたちも喜んで受け入れるはずです。稼げることがわかれば、リノベーションへ投資することを躊躇しなくなるでしょう。なんといっても、投資するだけの資金は持っているのですから。その場合、他人が借りても良いと思う場所なのか、性能なのか、広さなのかが問われます。住宅だけでなく、他の利用価値があるのかについても考えたいものです。例えば、富山の友人は、雪深い田舎の築150年の実家をゲストハウスに変え、3年ほど運営してから経営権付で売却したところ、驚くほどの価格で売れました。千葉の数寄屋造りの実家を相続したS様は、どうしても建築物として残したいと思い、住宅としてではなくデイサービス会社へ賃貸することにしたのです。私の住まいも「耐震・断熱体験館」にリノベーションして、年間の光熱費は実質ゼロの事務所併用住宅へ変えました。一部屋余っていたので、民泊としても活用しています。将来は、自宅でビジネスを行う人が多くなるでしょうし、貸しやすい、売りやすい住宅に変えれば、解体されるリスクは少ないと考えたのです。

次に、60歳代では、女性が住宅をどうするかの決定権を持っていることが多い。行動に移させる鍵は、寒さ対策と光熱費削減ではないでしょうか。一般的に、「寒さ」には男性よりも女性が圧倒的に弱く、寝室を別にしたいほど感覚が違います。寝室だけでなく、キッチンの寒さは堪えるようで、その人たちに「断熱性の高い住宅」を体感させることです。住宅まるごと断熱ではなく、寝室やリビング、キッチンなど部分断熱にして、コストを抑える方法もあります。結果、光熱費も削減できるはずです。

もう一つ、特に男性には不動産投資を提案することです。この世代は、自宅以外に相続で譲り受けた不動産を持っていることが多く、単純売買だけでなく、不動産活用の提案が響きます。少なからずリスクはあるものの、「家族の役に立ちたい、まだまだ稼ぎたい」という意欲が残っています。賃貸アパートやゲストハウス、貸店舗、デイサービス、グループホーム、シェアオフィスなど、社会的に不足している施設はまだあると考えています。そのような提案ができる、ネットワークを持つことです。

最近、平屋の分譲住宅が増えているのは、この世代が住み替えているからです。自宅は小さくていいので、高性能な住まいにしたいと考え、行動しているのです。分譲住宅会社も30代から40代の一次取得者から、ターゲットを変えてきています。

地域に密着し、長年同じ商圏で活動してきた私たち工務店だからこそ、今がターゲットを変える時ではないでしょうか。旅行や趣味に資金を使ってしまう前に、住まいを次世代でも活用できるようにすることを、積極的に提案していきましょう。上記のような良い提案ができれば、60歳代のアクティブシニアは、必ず動いてくれるはずです。

