真夏の研修

年に一度、日本木造住宅耐震事業者組合(木耐協)では耐震関連の集中研修を行っています。数年前までは、富士山麓で泊まり込みの研修を行っていたようですが、コロナ禍をきっかけに宿泊ではなく1日研修へと変わりました。今年は、組合員50名程度が参加し、3つの講義が実施されました。これが、ためになるだけでなく実に面白い内容でした。

第一部は、名古屋工業大学の井戸田教授による「低コスト工法」と達人塾の内容です。ここ10年ほどで、30数県が補助金の対象として採用するに至り、一気に普及してきた工法です。特に西日本の「土壁」仕様の住まいについて、これまで耐震改修で苦労があった点を解決できるようになりました。この工法の考え方は、精密診断を行い、精度の高い改修を目指すことで、コストを下げるというものです。また、高強度の耐力壁を使うのではなく、一般的な材料を用いた弱強度の壁を数多く配置することでコストを下げます。コストのかかる土壁改修や基礎改修、屋根改修などに頼らず、付加する壁だけで改修をするのです。そのうえで補助金制度を活用し、消費者負担をできる限り減らして改修棟数を増やし、事業者にとってもビジネスとして成り立つスキームです。当然、弱い壁をたくさん入れるので、柱頭・柱脚に大きな引き抜き力がかからず、それらの金物も安価で、取り付けしやすいメリットがあります。

第二部も素晴らしい内容でした。普段から耐震診断・補強をビジネスとし、木耐協の技術能力向上を担っている技術向上委員会のメンバーによる、ノウハウ公開のパネルディスカッションです。彼らは、年間20棟ほどの補強工事を受注しており、現場調査方法から診断報告方法、耐震補強設計の提案方法まで、惜しみなく教えてくれました。補強工事の受注率が7~8割と極めて高い会社がほとんどであり、「リスペクト営業」を完全にマスターしているのです。現場調査は2人で時間をかけて実施し、床下や小屋裏に潜ることはもちろん、外回りや屋根の状況はドローンを活用しているのです。もちろん、補助金利用率も高く行政からの信頼を得ており、お客様が施工を数か月も待っている状態だというのです。

第三部は、AIの活用方法についてです。実例紹介だけでなく、参加者がパソコンやスマホで実践する形式で行われました。同時通訳や、企画書・見積書など、無料ツールを活用するだけで効率よくできるのです。今後、マンスリーという情報誌で連載していくことになっているようです。
その後、参加者による懇親会場で情報交換会。ビジネスで成功しているベテラン組合員様や大学教授たちに直接質問ができ、自社の耐震補強ビジネスをどう進めるのか、ヒントになったのではないかと思います。

今回の研修には学ぶべき点はたくさんありました。第一に、告知活動をしっかり行っている点です。ホームページに力を入れ、ブログやSNSを通じて、経営者が「耐震への思い」を出し続けているのです。新規のお客様の獲得ルートは、ホームページからの問い合わせ、OB顧客からの紹介、そして行政からの紹介となっています。第二に、間取りの変更を伴うリフォームの際に耐震診断を行うことで、根拠や自信を持った提案ができる点です。耐震診断ができることで、開業医の立場のような「リスペクト営業」ができるようになります。お客様との立ち位置が変わり、相見積もりや値引き工事もなくなり、感謝の言葉が大幅に増えるのです。結果、受注活動で困ることはなく、安定経営につなげられるのです。そのためには、新しい技術や道具を常に意識して習得し続けることも忘れてはならないのです。

木耐協が主催している「真夏の研修」の受講は、耐震に関する新しい技術を補ううえで強くお勧めします。また、木耐協では、耐震診断・補強の基本の研修に加え、全国7か所で「エリア研修」も継続しており、組合員様向けに学びと情報収集の場を常に提供しています。そのためには、まずは組合員になることからですね。

