住宅建築への思い

一級建築士の更新条件である定期講習会を3年ぶりに受講しました。講習内容には、建築行政の方針が見え隠れしますね。何が問題で、どう解決するのか、改正される法律や制度で方向性が見えてきます。
第一に、建築行政で強化されているのが「省エネと空気環境」に関することです。全ての建築物に「省エネ」を義務付け、設計時だけでなく検査済証発行時まで審査機関が確認することで、省エネ建築の普及を徹底していく考えです。国全体のCO2排出削減目標に対し、家庭部門は削減目標を大幅に下回っています。運送業界や二次産業などが目標達成に向けてしっかりと進んでいるため、余計に目立つのです。今後、ZEB、ZEH、ZEH-Mなどをより一層進め、新築される建築物は「省エネ」が徹底されていくでしょう。課題は、言うまでもなく圧倒的に存在する既存建築物の「省エネ」をどのように普及させていくかです。これらの課題を解決していかないことには、国全体のCO2削減目標を達成することはできないのです。

第二に、地震対策です。定期講習会テキストの中でも大幅なページを割いて、「免震・制震工法」の採用を勧めています。公共建築物には普及し始めているものの、民間の建築物に関してはまだ数%程度にとどまっているというのです。構造的な解析をすると、免震や制震工法のほうが設計として単純になり、コストも安くなりつつあるというにもかかわらずです。また、この2つの工法を組み合わせることもできます。その企画設計には、構造設計士の力が必要不可欠であり、まさに実力を発揮できる分野なのです。しかし、お客様と直接話ができる企画設計者が、これらの重要性を正しく理解していなければ前に進みません。彼らへの啓発こそが最優先事項なのかもしれません。それ以外でも、講習では建築士の倫理、役割などを踏まえた社会への影響、貢献などについて語られました。

今後、私たちが扱っている木造建築や住宅に関して、「既存住宅の省エネ」と「新築住宅の制震工法」がビジネスにつながると考えています。これらは、現在ではまだ十分に普及していない一方、国の方針には合致しているからです。「省エネと空気環境」に関して、新築住宅づくりでは最低限の性能が義務化されたこともあり、ハウスメーカーをはじめ研究が進み、どの会社でも対応可能な時代になってきています。そのため、価格以外での差別化が難しくなっています。しかし、既存住宅において、新築と同程度の性能まで改修できる会社はまだ少なく、これからは「省エネと空気環境」を新築住宅並みに設計・施工できる会社が勝ち組になれると踏んでいます。断熱・気密の施工方法はもはや最低限のことであり、一棟まるごとの効果がある「換気設計」ができるか、空気環境を考えた家電、家財などをどう提案できるかが、他社との差別化の一つになると考えています。

次に「制震工法」ですが、木造建築で採用をするかどうかは、住宅会社が「構造に対してどの程度大事に考えているか」といった意識の問題だと考えています。将来的には、耐震工法から制震工法にいずれ変わっていきますが、どれだけ早期に取り組めるかが供給会社としての差別化につながるはずです。「制震工法採用、エリアNO1供給」や「繰り返し起こる大地震に備えた、制震工法」といったキャッチコピーが当たり前になる時代が、すぐそこまで来ています。

日々起こる自然災害や少子高齢化といった社会情勢が、私たちの住宅業界に大きく影響を及ぼしています。住宅不足の時代は供給することが優先され、住宅の性能は置き去りにされてきました。快適、安心といった最低限の住まいの機能がやっと注目され、進められてきましたが、残念ながらまだ新築住宅が中心です。耐震改修や断熱・換気改修といった方法で、既存住宅をもっと快適・安心な住宅に変えていかない限り、日本の住宅環境や災害対策を十分に満足させることはできません。特に一戸建住宅、木造建築に携わっている会社は、既存住宅改修に目を向けてほしいと考えています。築35年の「耐震・断熱改修体験館」を公開しているのは、少しでもお役に立てばと考えてのことなのです。この体験館にも制震工法を採用してみようと考えています。

