耐震技術の活用方法

耐震技術においては、耐震診断と耐震補強をセットとして捉えることが重要ですが、実際には耐震診断しか行わない設計事務所や、補強工事だけを請け負うリフォーム会社も少なくありません。一方、私が顧問を務める全国組織「木耐協(日本木造住宅耐震補強事業者協同組合)」は、事業者の補強工事技術の研鑽を目的として組成された団体であり、住まいを「強くすること」が命を守ることにもなるという考えのもと、補強工事技術の向上に向け、耐震診断技術の習得を含めた一体的な支援を行っています。

もちろん、行政の補助金制度を利用して耐震補強を行う会社が多くありますが、補助金を利用するお客様が減少していることも事実です。それは、旧耐震(昭和56年以前)基準の住宅に住む人のうち、耐震補強をする意欲のある人はすでに実施済みだからです。それ以外は、そもそも関心が薄い、経済的に難しい、高齢であるなどの事情で放置されているケースがほとんどです。

一方、1981年から2000年までに建築された住まいはアクティブシニア層が住んでおり、リフォーム工事の適齢期も迎えています。しかし、この年代の住宅は現在の耐震基準を満たしておらず、十分な耐震性能を満たしていないこともあります。実際、熊本地震(2016年)や能登半島地震(2024年)においても、大きな被害が発生しました。そのうえ、住んでいる人たちが、「自宅が弱い」ことを知らないまま過ごしているケースもあります。最近では、こうした住宅の耐震補強にも補助金が利用できるようにする行政も増えてきています。

そのような状況だからこそ、耐震技術を持っていることが他社との差別化につながると考えています。第一に、段階的な補強による顧客の囲い込みです。わざわざ耐震診断・補強工事を行うのではなく、リフォーム相談時に耐震診断を実施し、まずは現状の強さを知っていただくのです。例えば、トイレの改修や、浴室・キッチンの交換時に、一緒に壁を強くすることで今よりも耐震性を高めます。次回のリビング改修時にさらに強くし、次々回の玄関改修時にそこからもう一段強くする。このように徐々にリスクを減らしていく提案をすることで、継続的な顧客の囲い込みにもなります。

第二に、「買取再販住宅」市場の開拓です。今後、相続不動産が急増すると、それを扱う不動産会社も差別化を意識し、耐震や断熱性能を重視するようになっていくでしょう。また、金融機関も耐震性が担保できていれば融資をしやすくなります。こうした事業者も、耐震技術を持つリフォーム会社を選びたくなるため、プロユーザー向けの情報発信や周知活動をお勧めします。

第三に、「住宅団地」へのアプローチです。こうした団地は、同じ時期、同じ工法、同じような間取りで販売していた建物で成り立っています。近所の住まいが、「耐震診断・補強工事」を行えば当然のように気になり、「自分の住まいも見てもらおう」となります。実際に、団地内に街角モデルハウス(耐震補強住宅)を公開して、受注に繋げている事業者もあります。

最後に、行政とのネットワーク強化です。耐震診断や補強工事の補助制度があるにもかかわらず、利用率が非常に少ないことに悩んでいる行政は少なくありません。こうした補助制度の窓口は、設計事務所協会などが担っていることが多いですが、耐震診断にとどまり、補強工事まで進まないことが課題となっています。そのため、数社で集まって受注組織を作って活動している木耐協の組合員もいます。 耐震技術は、住宅として最低限の性能を担保するものであり、地震大国である日本で事業を行う以上、リフォーム会社が身につけるべき技術なのです。そのうえで、断熱改修や快適、便利、綺麗といった機能が必要になってくると思うのです。これから、上記のような住まい、お客様が市場に出てきて、大きなマーケットになると確信しています。今からでも十分に間に合いますので、準備してはいかがでしょうか。

