日本の木材を輸出できないのか

戦中に燃料に使うために山林を切ったこともあり、戦後、国策として植林が行われました。将来を見据えて森林資源を確保するという目的でしたが、当時の想定ほどは使われず、現在では育ちすぎて太くなりすぎた木がたくさんあるようになってしまいました。また、残念ながら、森林の手入れが十分でなく、花粉症という副産物を生み、土砂崩れといった災害を引き起こしている山も多く存在します。新築住宅に支えられていた国内需要も、今後着工数は減っていきます。法律まで作って推進しようとした非住宅建築の木造化も、思ったほどは進んでいない状況です。林野庁や、山林・木材関係者だけに任せるのではなく、もっと国を挙げて取り組む必要があると考えています。

その一つが、関西・大阪万博のパビリオンではないかと思っています。あれだけの大規模な木造建築を作ってPRしているのも、「日本の木材、技術力」を世界に発信したいからです。必ず世界から注目され、「国産材の輸出」に繋がると思っています。木造の特長は、第一に、しっかりとした維持管理さえすれば、千年という他の工法ではありえないほどの「長持ち」をする構造体であるということです。日本には、数百年を超える、寺、神社やお城などたくさん現存しています。その維持管理方法とセットで提供していけばよいのではないでしょうか。

素材となる木材については、集成材だけでなく、LVLやCLTといった新たな加工技術が進み、もっとも大切な人工乾燥技術も世界で抜きんでています。更に、表面だけを圧縮する技術、プラスチック複合加工技術、耐候性を高めて腐りにくくする技術、燃えない木(不燃材)、ガラス塗料など、どんどん進化しています。これにより、低層の建築物の構造材としてだけでなく、木造の高層ビルも実現できるようになり、オークやウォールナットといった外国産の広葉樹が中心だった内装や家具にも、日本のスギやヒノキといった針葉樹が使えるようになり、外装や雑貨(ペンやスマホケース、キーボード)などでの活用も進んでいます。更には、木の繊維を砕いて糸にして布にする技術もあり、服を作ることもできるようになっています。木でできることは少しずつですが広がりつつあるのです。

日本国内の森林蓄積量は約50億立方メートル、1年間に成長する量は、約1億立方メートルと言われています。一方で、年間の消費量は約2,000万立方メートル程度しかなく、あまりに余っている資源を有効に利用していないのは、誰もがわかっています。成長する量を日本国内だけで消費しきることは、もはや不可能だと思うのです。もちろん、建築資材だけでなく、燃料(バイオなど)やパルプ原料も増やさなければならないでしょうが、持っている技術を駆使して、これまでには考えられなかったような業界に新規開拓できないのでしょうか。

例えば、航空機や自動車、電車、豪華客船の内装が当たり前のように木にならないでしょうか。自然に存在するのだから、お酒や食料、動物の飼料(シロアリは消化する)にはならないでしょうか。炭素繊維は木材から抽出できるようにならないのでしょうか。成分を医療や薬剤に転用できないのでしょうか、そんな夢のようなことを考えてしまいます。もちろん、研究機関や大学が色々なことを考えていることも承知していますが、たくさんの森林資源を持ち、技術力を持つ日本だからこそ、解決できるような気がしているのです。木は植物ですが、それが構成した森林は、太陽や海、川や空気といった自然を織りなす一部と感じるのです。人間を中心に据えると、経済面を無視できないことも確かですが、自然の力で成長する木をもっともっと活用しなければならないと思っています。 世界中で、森林火災が起こっています。その原因の一つが地球環境の変化だと言われています。海温の上昇から偏西風が曲がっていくことで、異常な乾燥や降雨のエリアが出てくる。また、森林の手入れが不十分なこともあり、火災面積が広がり、大きな災害になる。異常気象の原因である二酸化炭素の排出を抑えようと叫ばれているのに、森林が燃え、二酸化炭素が出てしまうといった皮肉が起きているのです。人間中心の経済活動に対して、神様からの警鐘に聞こえてくるのです。「もっと、目の前に存在する空気、太陽、川、海や山林など、自然を上手に活用しろ」と。

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