「少しずらす」ことはできないか

企業は、決算期日ということを非常に意識します。特に、上場会社は、株主だけでなく証券取引所をはじめとする関係各所に情報を公開するので、売上・利益の計上を社員一人ひとりにまで徹底させます。また、この時期はお客様にとっても転勤や入学といった大きな転換期であり、引き渡しや引っ越しが重なります。どの企業も仕事が集中しているため、施工業者や運送会社は時間単位で予定が組み込まれており、天候やミスによって少しでも建築工程がずれると、「一週間以上来ていただけない」ということも珍しくありません。

それでも、ほとんどの企業は3月末決算を見直すことはありません。国や市町村といった行政庁が「年度」という考え方を見直さない限り、民間企業だけ変えることもできないのでしょうか。あらゆる業務は、平準化することで大幅な効率化を図ることができます。その結果、コストダウンにつながり、残業なども減少させることができると誰もがわかっています。例えば、年末年始や夏季休暇、ゴールデンウィークなども、少しずらして取得するだけで、宿泊費や旅費も大きく下がり、渋滞も少なくなります。

私は、40年以上にわたり組織の中でサラリーマンを行ってきました。定年を機に、組織の中の人間から「ひとり企業の人間」へと立場を変え、自宅を改装して「事務所兼断熱体験館」にしました。会社通勤をなくしてお客様への訪問を増やし、会社貢献から地域貢献へと時間を割くようにしました。趣味の一つであるゴルフも平日に行くようになったことで、今では以前の半額でプレーできています。行動を「少しずらす」ことで、あらゆる関係性が変わってきたと感じるのです。お客様やお付き合いする人との会話の内容もずいぶん変わり、更に、収入だけでなく支出も大きく変わったのです。一般的な人生ではなく、自分が主人公と思えるような人生に変わったと思えるのです。

うどん県として知られる香川県に、「伊吹いりこセンター」というらーめん専門店があります。漁港の目の前の食堂を改装し、早朝6時から8時まで「朝ラーメン」(店舗は14時まで開店)を提供しており、朝から行列ができるほどです。従業員は、近くの奥様達であり、お客は漁師とゲストハウスの宿泊客です。地元で有名な伊吹いりこだしを使ったスープで、朝らーめんだから価格も安いのです。時間や商品を「少しずらす」ことで、人気店となっているのです。

私たち住宅会社も、「少しずらす」という選択肢を持つと良いのではないかと考えています。まずは時間軸ですが、ゴールデンウィークや夏休み前に引き渡しをずらすだけでも、施工職人を確保できます。プレカット加工や資材配送も余裕を持つことができるのです。転勤や転校といったお客様側の事情はあるでしょうが、一カ月程度ならば、対応は可能なのではないでしょうか。

次に扱う商品です。専用住宅から賃貸住宅や貸店舗を中心にすること、設備や外壁リフォームから耐震化専門会社にすることでも良いでしょう。商圏内でのライバル会社から、商品を「少しずらす」のです。例えば、地盤調査をSS調査ではなく、表面波調査に変えてみる。耐震性能であれば、耐震等級3から等級2+制震部材搭載に変えてみる。プランについては、あえて平屋や総二階建てではなく、「平屋+固定階段ロフト」、基礎高を1,000㎜程度にして基礎断熱を採用し、「平屋+固定階段床下収納」にしても良いでしょう。営業エリアも、地元の町内や隣接町ではなく、一つ飛ばしてみる(新規店に感じる)のも良いと思うのです。ターゲット層を一次取得者からシニアや企業に広げれば、これまでにない新しいお客様と接点を持つことになります。

ここ数年、住宅業界はレッドオーシャンと言われ、他社と同じ経営スタイルでは厳しい時代に入っています。それでも、住宅業界で生き残っていくのであれば、変える勇気を持ってチャレンジしなければならないでしょう。直ぐにでもできることが、「少しずらす」ということではないでしょうか。そして、他社がやらないことができ、違いを出すことができるはずです。

