東日本大震災から15年

3月11日で、東日本大震災から早15年です。阪神・淡路大震災からは31年。20世紀の終わりから21世紀にかけて、日本列島は地震の活動期であると言われていますが、15年から16年間隔で起きていることを意識しないわけにはいかないですね。首都圏や、東海、東南海、南海トラフ沿いのプレート境界線上では、いつ大規模な地震が起きても不思議でない状況がここ数年続いています。地震で最も怖いのは、一瞬で命を奪われる「弱い建造物」に居ることです。建物さえ強くなっていれば、たとえ津波や火災が起きても、逃げる時間は少なからず残されているからです。まずは、「命を守る」ことを最優先にしなければならないのです。

しかし、残念なことに、体力的に逃げにくい人ほど弱い家に住んでいる傾向があります。それがわかっているにもかかわらず、耐震補強は思ったように進んでいません。また、高齢者や要配慮者が住んでいた住まいが空き家になってしまっているケースが増えています。体力的に弱く、旧耐震に住む少人数家族に対して、公営住宅などを低価格な家賃で提供して、移転してもらうことも「命を守る」ことになります。そのような政策も考えてほしいですね。行政サービスもしやすくなり、もしもの時の行政の負担も少なくなるのではないでしょうか。

私たち工務店、住宅会社がすべきことは、言うまでもなく、新築住宅を作り、リフォームを一棟でも多く手掛けることです。1981年度以前に建てられた旧耐震の住まいは、既存不適格住宅が多く、耐震化はハードルが高いので建て替える。1981年から2000年に建てられた住まいは、命を守る耐震リフォームを実践する。これが基本です。住宅の耐震化を提案できるチャンスは、リフォームをするとき、売買する時しかありません。例えば、キッチンや浴室を新しくするなら、一緒に壁も強くする。内装材を綺麗にするなら、壁も補強する。屋根材を交換するなら、軽くするなど、ひと手間かけるだけでも、命が助かる可能性は高まります。構造を理解している私たちは、綺麗さや便利さを追求するリフォームだけでなく、快適な住まい、安全な住まいを提供するべきです。そのために、耐震化と省エネ化をする「性能アップリフォーム」を前面に出すべきだと考えています。

日本木造住宅耐震補強事業者組合(木耐協)では、これまで組合員様限定だった研修を一般の住宅会社へも提供するようになっています。一社でも多く、一人でも多くの耐震技術者を育成することが、今は重要だからです。設計事務所の役割を否定するわけではありませんが、耐震診断や補強提案だけでは家は強くなりません。実際に補強工事をしない限り、「命を守ること」ができないからです。

また、耐震診断は、現地で得られる正しい情報を入力して初めて、正しい診断結果が得られます。木耐協の研修の一つである「現地調査実践研修会」では、1981年以前に建築された建物を研修施設として活用しています。床下や小屋裏に入り込んで、診断の道具の使い方や、現地で情報を書きこむ図面作成まで、現地調査の仕方を実践で学ぶことができます。実際に、基礎のクラックや土台の腐れ、筋交いや火打ち梁の取り付けなど目で見て判断できます。床や柱の傾きや、内外装の仕上げ材を確認するのです。それらが、全て耐震診断の情報になり、正しい耐震診断の数値になっていくのです。住宅リフォームを手掛けているのであれば、一度は受講すべきと思っています。

施工価格の高騰や家族構成の変化によって、新築住宅事業は厳しい時代になってきています。今後は、不動産会社が中古住宅を再生して流通することが更に増えるでしょう。中古住宅のストックが増えるなか、新築事業に較べて時間がかからず、利益率も確保できるとなると、ビジネスとして成り立つからです。そうなると、やはり住宅の耐震性能を担保できているかが、販売できるかどうかの判断基準になります。また、銀行融資も耐震性能が条件になっていくと考えられるのです。そのような時代に合わせた住宅会社になるためにも「性能アップリフォーム」の技術を磨くことは重要ではないでしょうか。


