木造賃貸住宅の差別化

一戸建住宅の新築事業はここ数年、着工数が減少して厳しい時代に入ってきました。残念ながら、長年の少子化の影響もあり、結婚組数は減少しています。また、2000年以降は、住宅性能表示制度や長期優良住宅の普及もあり、住宅の長寿命化が進みました。二世帯住宅にする家庭も少なく、建て替える理由が少なくなっています。

一方、賃貸住宅ビジネスは、底堅く推移しています。着工数こそ減少していても、案件当たりの受注金額は伸びているのではないでしょうか。かつての高度成長時代に、区画整理によって田や畑から宅地に変えられた土地に建つ賃貸住宅は現在、築40年から50年を迎え、まさに建て替えの時期を迎えています。こうした土地の所有者は地主が多く、リスクの少ない賃貸住宅事業を継続したいと考えている人がほとんどです。入居者がいるのか?といった課題はありますが、独り住まい、二人住まいが多くなったこともあり、まだまだ世帯数は増えているのです。また、将来的に2拠点居住が普及していけば、新たな需要も期待できると考えています。

引き続き新築の木造建築を主力としたい住宅会社は、賃貸住宅やゲストハウスを手掛けるべきと考えていますが、今からはじめてもどうしても後発になります。また、営業方法の変更や賃貸管理といった新たな業務ノウハウが必要となるため、まずは、不動産会社とのネットワークを構築する必要があります。その次に、建物の差別化ではないでしょうか。私は10年前、「メゾネット+固定階段ロフト+太陽光売電」といった商品で展開していました。それは、ハウスメーカーが提供していないこと、木造建築の弱点である上下階の遮音問題を解決する有効な方法だったからです。しかし、10年も経つとその優位性が薄れます。次の差別化として必要なのは、木造の利点を活かした「耐震と省エネ性能」だと考えています。

先日、埼玉で事業を行っているY・建築工房様の「超高性能木造マンション」の見学会に伺いました。特徴は、①冬はほとんど暖房がいらない断熱等級7、②地震に強い許容応力計算等級3、③自然素材の内装、④自然豊かな外構、⑤各住戸専用宅配ボックス、⑥エアコン・照明設置となっています。

①断熱等級7の仕様として、窓は樹脂のトリプルガラス(南側のみペア)、基礎断熱EPS100㎜、壁はグラスウール120㎜とネオマ30㎜、屋根断熱はグラスウール250㎜吹き込みとなっていました。全戸気密測定を行い、C値0.5を達成しています。気密断熱は徹底した施工方法を取っています。共同住宅の最大の課題は、換気方法であり、今回は第3種換気を採用していました。性能以外では、⑤の宅配ボックスとメーターボックスとを一体化したオリジナル商品が組み込まれていたことと、外壁に地元産の杉板を活用していたことが勉強になりました。Y・建築工房様は、ノウハウや施工経験を公開するだけでなく、「超高性能木造マンション」を全国に普及するために努力されており、その姿勢には頭が下がります。

これまでの賃貸住宅は、残念ながら省エネ性能が低く、居住性が悪いだけでなく、熱中症やヒートショック、睡眠不足などの健康リスクにも影響を与えていました。これからの賃貸建築に期待されていることは、省エネ性能を持ち家並みに引き上げることであることは間違いないのです。賃貸住宅は、一戸建住宅と比較して、外壁面積、窓が少ない分、工夫次第でコストをかけずにできると思っています。また、2階建てならば、屋根や壁を利用した太陽光発電を設置することで、入居者の電気代ゼロ(給湯はガス)も可能になるのではないかと思っています。 さらに、現在、一戸建住宅の購入には「住宅ローン控除」といった有利な税制がありますが、地球環境へ貢献しているのですから、「省エネ性能や耐震等級」を満たした賃貸住宅の住民には、「賃料控除」といった制度を作ってほしいものです。賃貸住宅ビジネスは、まだまだ有望な業界だとは思いますが、ハウスメーカーをはじめライバルが圧倒的に多いこと、借上げ保証や入居者募集、銀行融資といったと一戸建住宅とは違った特殊なノウハウが必要でもあります。高い壁があるように見えますが、それを乗り越えてチャレンジする価値があると考えています。


