木造建築の耐震診断法の改訂

「木造住宅の耐震診断と補強方法」が13年ぶりに改訂されました。2025年度版が発行され、2月から建築防災協会が説明会を全国各地で開催しています。今回の改訂のポイントは、一般診断法、精密診断法がともにより精緻化されたことです。まず、改正建築基準法の算出方法との整合性がとられました。また、断熱改修や太陽光発電などが一般的になったことを受け、必要耐力を算出する上で建物の重量計算が精緻化されました。保有耐力や補強に使われる耐力要素がこの数年間で増え、データが充実したことにより、準耐力壁や多段階筋交いなどが盛り込まれました。そのうえ、柱接合部の低減係数があまりにも大きく、補強工事に支障があったことから、低減係数の見直しと、「接合部Ⅱ+」が新設されました。水平構面や偏心率(4分割法廃止)など耐震診断プログラムを利用することを想定した内容になりました。

一番の方針変更は、1981年から2000年までに建設された木造建築は、充分な耐震性を確保できていない可能性があると認めていることです。建築の専門家でない所有者が検証できる「木造住宅の耐震性能チェック」というリーフレットを制作して、普及させることになっています。残念ながら、柱や横架材の接合部が不十分、バランスが悪い、地盤耐力に合わせた基礎になっていなかった時代なのです。それらの住宅について、積極的に耐震診断・補強を行うことになっています。

今回の改訂は、より精緻化されたことで耐震診断がやりにくくなったように思いますが、一方でビジネスチャンスではないかと考えています。日本で圧倒的に多く存在しているのが、1981年から2000年に建築された住まいです。ご存じのように、新設住宅着工戸数は大きく落ち込み、建築コストも驚くような価格になっており、「買取再生中古住宅」が住宅業界の中心になりつつあります。その主な対象となっているのが、1981年から2000年の住宅だからです。この時期の住宅は、4つの弱点を解決できれば、補強費用もそれほどかけずに耐震性を向上させることができます。また、住宅金融公庫から融資を受けていれば、最低限の接合部金物も付いており、更に補強がしやすくなっています。

ただし、これをビジネスチャンスとしていくためには、耐震診断や耐震補強の技術力を身に付けなければなりません。精緻化された分、より正しい現地調査力が必要になります。机上で得る情報は少なく、床下や小屋裏から得る情報、地質、地盤に関する情報も必要となりますし、被災履歴も重要な情報になります。正しい情報が得られないと耐震診断の数値が変わってしまい、耐震補強の費用も大きく変わるからです。耐震診断・補強事業に自信を持てない会社に加入をお勧めしたいのが、日本で唯一、木造住宅の耐震補強を学べる組織と言われている「日本木造住宅耐震補強事業者組合」です。中小の設計事務所やリフォーム会社、工務店様など、約900社で組織をつくり、約30年になります。耐震診断戸数も17万戸を超え、耐震補強戸数も4万戸を超えるなど、多くの実績があります。

耐震診断や耐震補強はこれまで、最終消費者からの相談や発注が中心でしたが、これからは「買取再販事業者」からの要望が増えてくるのではと思っています。最近の新築住宅の「性能」は高いレベルにあり、中古再生住宅との差別化が図られています。しかし、今後は中古再生住宅にも新築と変わらない性能が求められ始めるのではないでしょうか。中古再生住宅が流通すればするほど、見た目だけではわからない、耐震や断熱の性能アップが差別化になっていくと業者は考えるからです。また、リノベーションを行い、民泊や介護施設、グループホームなど、他用途への利活用をするならば、最低限の耐震性能が求められ、融資も受けにくくなる時代となっていくはずです。その時に対応できるかできないかが、ビジネスチャンスを大きく広げるのです。これからの時代を良く見れば、工務店やリフォーム会社にとって、これほど大きなチャンスはないのではないかと思います。


