相続による不動産ビジネス

N社勤務の最後の10年間、木造アパ―トの受注部門を担当していました。2015年の相続税改正を機に、首都圏では、一般の会社員層も相続税対策を考える時代になりました。そこで、民間資格ではありますが、相続診断士を取得し、受注に繋げていました。年に数度は、「鈴木さん、間に合いました」といった電話を相続人からいただくのです。アパート建築では、決断してから効果を発揮するまで1年以上かかることもあるからです。

しかし最近、相談されてくる相続人の様子が変わってきています。今までは、ほとんどが被相続人か子どもたちだったのですが、昨年は、姪や弟といった親族が増えてきたのです。例えば、私が住む東金市の昔の分譲地に住んでいた80歳代の男性が亡くなったケースでは、相談者は埼玉に住む60歳代の姪なのです。被相続人は、生涯単身で両親は早くに亡くなり、姉(相続人の母)が一人いたものの、10年以上前に亡くなっていました。相続人である姪は、東金にはほとんど来たことがなく、親戚もいなく、相続不動産に愛着もないのです。築40年以上の土地建物をどうすればいいのか、そんな相談です。

また、私の生まれ故郷である千葉の勝浦のケースでは、被相続人が定年退職を迎え、両親が亡くなって空き家になっていた実家に戻ったのですが、突然亡くなったのです。やはり生涯独身であり、兄と弟の3人兄弟です。兄は、数年前に亡くなってしまい、奥様と子どもが残されていました。60歳代の弟も生涯独身なのです。残念ながら、兄家族とのコミュニケーションはほとんどなく、残された弟からの相談なのです。実家に戻るつもりもなく、父親の代からの実家をどうすればいいのかという相談です。築50年以上で、道路に面していない300坪を遥かに超えた敷地なのです。もう一件、東京の三鷹のケースでは、80歳を過ぎてから姉の住んでいた土地建物を相続しました。遺書もなく、残された相続人たちも高齢者であり、その子供たちで揉めているのです。知り合いの司法書士に相談すると、「相続不動産登記」が3年前に義務化されたことで、こうした相談が急増しているというのです。

日本では年間約160万人が亡くなっています。ということは、160万件の相続案件があるということになります。もちろん、全てに不動産が絡む訳ではないにしても、これから更に多くの「相続不動産難民」が発生することは間違いないでしょう。最終的には、「自己居住(リフォームか建て替えて、自分が住む)」「賃貸運用(リフォームか建て替えて、他人に貸す)」「売却(現況のままか解体して、売る)」の3つの答えしかありませんが、権利関係の解決、相続人たちの合意など、大きなハードルがいくつもあります。いかに亡くなる前に対策を講じているかが重要になりますが、ほとんどが遺書さえも作っていないのです。

このような時代だからこそ、私たち住宅会社の役割は増してきます。最後の落としどころは、建物をどのように変えるか、だからです。しかし、ビジネスにつなげられるかは、「迷える相続不動産」の情報をいかに早く取得し、被相続人や相続人から信頼を得るかになります。住宅に関わるビジネスである限り、不動産事業と切っても切れない関係であることは、言うまでもありません。宅建業を取得するまで行わなくても、上記のような情報を得るには、やり方はあると考えています。

私の例ですが、「相続診断士」という資格を取得していますから、「相続対策はお済みですか?」というチラシを作り、OB施主様へアプローチをしています。チラシには、成功事例(デイサービス、アパートなど)や不動産評価方法などを載せ、年末のカレンダー配りや年数回のDMなどに織り込んでいます。まだ約1年ですが、相談されるようになってきました。もちろん、自社のOB施主だけでなく、商圏内の消費者にもアプローチしていきたいので、「相続不動産の窓口」といったキャッチコピーを使って、地域に根差した活動も必要だと考えています。司法書士や税理士など専門家とのネットワーク構築も重要であり、徐々にですが、形になってきていると感じます。

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