阪神・淡路大震災から30年

真冬の早朝、大都市直下の大地震は、日本中を震撼させました。テレビから流れてきた映像では、高速道路が倒れ、あらゆる場所から火の手が上がっており、精巧に作られた映画を見ているようでした。関東に住んでいた私は、何が起こったのか、現代にこんなことが起きるのか、不思議な感覚で見ていたことを記憶しています。

数年後、N社を中心に「木造住宅の耐震化」を具現化していくために、NPO法人住まいの構造改革推進協会を立ち上げました。設立して数年後には、全国の工務店700社が加盟する団体となりました。「耐震診断・補強工事」の技術を身に付け、お客様の住まいを強くして命を守るというキャンペーンを実施していったのです。情熱を持って行動できたのは、「阪神淡路大震災の教訓」「二度とあの悲劇を起こしてはならない」という思いからなのです。「声なき声を聴け」「住まいは命を守るもの」「火災の火元は倒れた家から」と訴えてきました。大地震の被害を劇的に減少させるために最優先にすべきことは、言うまでもなく住宅の耐震化です。避難所の充実やインフラ対策、医療、避難食は命を守った後でいいのです。自宅が倒れなければ、避難する必要もなく、水も、服も、寝具も自前のものを使えるのですから。

しかし、この30年の間に中越地震、東日本大震災、熊本地震、能登半島地震などの大きな地震が起こり、阪神・淡路大震災と同じ理由で倒れた家を見てきました。避難所も必要ですし、服も、寝具も、炊き出しも、相変わらず必要になっているのです。石破茂総理になり、防災庁ができます。風水害やがけ崩れも増え、地震以外の災害が多くなったことも確かです。しかし、多くの災害は、天候の精度が高くなったことで被害予想ができるようになったおかげで、直前防災が可能なのです。防災の重要度をわかっているのでしょうか。地震だけは突然起きるものであり、直前防災が利きません。発生後数分で建物倒壊の被害は大勢が決まってしまいます。ほんの数分間で、大切な命を落とすことになるのです。

日本は地震大国といわれますが、これを「地震耐国」に変えるように活動しているグループがいます。それが日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)です。木造住宅に絞り、徹底的に耐震改修を実施しています。声を大にして提言するだけでなく、耐震補強を実施している日本で唯一と言って良い組織です。地震に弱い家が、未だ驚くほど存在していることはわかっています。全国約1,000社のリフォーム会社が、コツコツ補強工事を行っていますが、さらに1981年から2000年に建築された「81-00」の建物の補強を訴え続けています。

木耐協では、地震で命を落とすことが無いような対策を優先し、いろいろな耐震提案をしていますが、残念ながら十分に伝わっていないという思いがあります。この30年で大きく変わったことは、空き家が急増しているということではないでしょうか。結果、それらの建物は、耐震化をすることはほとんどありません。完全に放置され、管理さえも放棄しているように見える建物は、もしもの時には確実に倒壊します。近隣が大きな被害(隣家に迷惑、道路をふさぐ、火元になる)を受けた場合、責任を持たせる必要もあるのではないでしょうか。そのくらい空き家に関しては厳しくしてほしいと考えています。

耐震化を進めるには、建築物の活用を増やすことで解決できると思っています。その解決策の一つが、「2拠点居住」を政策的に認めていくことです。一家族が、単身者でもよいですが、2か所まで居住することを正式に認め、住民税、相続税、住宅ローンも2か所まで広げます。そうなれば、多額の費用が掛からず、ふるさと納税と同じ効果が出てくるはずです。人口の東京一極集中も解消でき、地方の少子化もある程度は解決に向かうでしょう。

もう一つが「ゲストハウス」としての空き家の活用です。地方に移住とまではいかなくても、年間30日程度でも他のエリアに行く、泊まるという環境をつくり上げます。それだけでも地方都市も活性化します。都会生活と田舎生活の良いとこ取りを国民が享受できるようにするだけでよいのです。それが住宅の耐震化にもつながる。もしもの時にも、軸足が2つあれば、仮設住宅はいりません。その分の費用を、上記の政策費用に利用すればよいのです。

そのために、昨年から住まいるDesignでは、具体的に活動を始めています。生まれ育った勝浦市での空き家案件を探し、ゲストハウスや2拠点居住へのリノベーションを行う予定です。

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