空き家予備軍を食い止める
ここ数か月、業務提携先の数寄屋造りで有名なK建設様のOB施主様訪問を行っています。そのほとんどが、バブル時代に建てられた50坪以上の注文住宅であり、当時としても高額の部類に入いります。訪問すると、玄関と玄関アプローチ、和風庭園、外構など、驚くほどきれいに維持管理されており、それは見事です。また、お話をするお施主様からも、落ち着いた品の良さを感じるのです。しかし、お施主様は、二人住まいか独り住まいになっています。5件に4件は、「主人と二人」「娘と二人」「主人は、数年前になくなり、今は一人」などとなっています。自分たちだけでは、大きな住まいが手におえない状況になっていますが、それでもきれいなのは、たまに遊びに来る子どもたちか、それなりのプロを入れているのでしょう。もはや、新しい手を打つ気にもならないと言います。
K建設様だけでなく、一般的に言えるのではないかと思うのです。バブル時代は年間の新設住宅着工戸数が150万戸を超えており、当時に建てられた家はもうすぐ築40年を迎えます。売買がなければ、所有者も75歳を超える人がほとんどなのです。戸建てだけならよいが、マンションも築40年となると、修繕積立費も底をつき、今までのような快適さを確保できるか疑問が残ります。おまけに、来年4月には4号特例の縮小により、リフォーム(リノベーション)事業が一気に冷え込むという懸念もあり、山のようにあるこの時代の建物の存在が、日本の住宅業界のネックになるのではないかと考えてしまうのです。
また、マンションもバブル前の建築であれば容積率に余裕があり、手の打ちようがありますが、この時代は駅から徒歩15分以上も離れた場所でも容積率を使い切っている場合が多いのです。こうなると、建て替えも進まず、修繕積立費も余裕がない、そして、管理費も滞納が増えているのではないでしょうか。戸建てもマンションも、修繕や建て替えの時期を迎えているにもかかわらず、住まい手は、独りか二人住まいで80歳になろうとしているのです。
専用住宅と言われている建築物が、圧倒的に多く空き家になっていていることから、この建物を利活用できる状況に持っていくことが必要ではないでしょうか。まずは、2拠点居住を法律上で認めるだけでも違います。固定資産税や相続税などでも、居住用資産を2つまで認める。太陽光発電などの自家消費も2拠点で認めれば、田舎で発電した電気を所有マンションで利用できるようになります。また、用途地域における用途制限の緩和です。一種低層専用住宅地域でも、貸店舗や宿泊施設などにリノベーションするだけで活用の幅が広がります。相続する子供たちが所有、管理がしやすいようにしていただきたい。
このように、所有する側の立場で建築行政を変更するだけでも、解決策の1つになるはずです。住宅の利活用で簡単なのは、民泊(宿泊施設)ではないでしょうか。課題は、お客様探しとセキュリティー、代金回収なので、そこの専門企業が現れないかと思います。ネットで十分に可能ではないでしょうか。所有する人たちは、そこが不得意であり、できません。また、利活用しにくい空き室や空き家は、観光地でもなければ、ビジネス街でもない場所が多いので、宿泊する魅力をつけるお手伝いもできるはず。例えば、「数寄屋シリーズ」にすれば、外国人には魅力が出てくる。「快眠できる民泊」にすれば、忙しい主婦やサラリーマンが利用する可能性があります。
これからの時代、色々な提案や策は必ずあると考えています。しかし、現状を認めなければ、手の打ちようがないのです。今のままでは、少子高齢化、人口減少、東京一極集中、暑さ対策、エネルギー問題、必ず訪れるのです。世界に類を見ない地震大国であることは言うまでもなく、強靭化を進めなくてよいのでしょうか。国民の民力は高い日本ですから、住宅建設業界はもちろん、政治家や経済界、教育界、マスコミなどのリーダーたちが引っ張っていくしかないのです。