民泊ヨシローの実践
子どもが自立して10年以上が経ちました。築30年の自宅で起きていることは、日本中で起きている現象と同じです。良かれと思ってつくった子ども部屋が余って、物置化しています(笑)。このままでは、自分で設計した家が、「もっと活用しろよ、大事にしろよ」と言っているように見えたのです。そこで、1年前からオリジナルで高気密、高断熱、全館換気システムを考えて「耐震・断熱改修」を行い、快適空間を手に入れました。もともと、台風19号の被害で外壁や屋根、太陽光発電システムといった外部は改修済みだったので、内部に集中できたのです。そして、その空間をみなさんに提供しようと、「断熱改修体験館」と銘打ち関係者を招いています。しかし、東京からは電車で1時間以上かかり、車でも1時間程度かかるため、来館すると泊まりたいという人が出てきました。そこで、体験館の延長で「民泊」を行うことにしたのです。
東金市は、海水浴や釣り、サーフィンができる九十九里浜の近くに位置しています。最近では、高速道路が発達して東京都心からの日帰りがしやすくなったため、民宿や旅館業は急激に減っています。ビジネス泊もほとんど見込めない中、「泊まること」に意味を持たせた施設にしたいと考えました。それが、「一級建築士が提案する快眠できる部屋」というコンセプトの「民泊」です。ターゲットは、自宅ではゆっくり眠れない、一人でゆっくりしたい、朝気持ちよく起きたいなどと思っている中高年齢者です。
このコンセプトを実現するため、研究者や企業の実験結果を取り入れながら、いろいろな要素を組み合わせています。まず、温湿度コントロールは、「高気密・高断熱、熱交換型の換気システム」に改修済みです。次に、「木材比率」の研究データから、内装は床と天井を無垢の杉材、壁は「珪藻土」と「クロス」を組み合わせてリフォーム中です。照明、音、匂いといった要素も、科学的なデータをもとにつくり上げる予定です。また、「体の芯から体温が上がる」といった浴槽への改修も予定しています。そして、寝具は大谷選手が使っているマットレスや羽布団、六角枕などを3種類ほど用意して、宿泊客に選んでもらう予定です。自宅ではなかなかできないことを体験していただく予定です。もちろん、パジャマなども、データをもとに「快眠」しやすいといったものを使います。最終形がどの程度、いつになるか、自分でもわかりませんが、少しずつ変えていきたいと思っています。
住宅が本来持たなければならない機能は、動物でいう巣づくりだと思うのです。「子育て」「安心」「安全」という機能だけでなく、「安らぐ」「寝る」といった機能が重要なのです。起きているときに最大限のパフォーマンスを発揮するには、「快適な睡眠」が必要不可欠であることは言うまでもありません。ところが、残念ながら優先順位としてはそれほど高くなく、起床しているときのことだけを優先した住まいづくりをしてきました。「趣味」「ペット」「勉強」「料理」などが重要視され、住宅会社がつくる商品のコンセプトも、「掃除がしやすい」「メンテナンスフリー」「らくらく家事導線」「よい子ができる家」「ペットと楽しむ家」などが多い。だからこそ、「民泊ヨシロー」では、「快眠できる部屋」「熟睡」などの睡眠を前面に出し、一泊でも「ああ、よく眠れた」を実現させ、「もっと寝たい」「もっとゆっくりしたい」と言っていただけるようにしたいのです。結果、宿泊客の自宅をリフォームさせていただけたら最高です(笑い)。
ビジネスは、どこでもどんな条件でも、知恵を使い、工夫をして、行動することで、何とかなると思っています。大成功はないかもしれないが、私にとって心の底から楽しいことなのです。「民泊」でのビジネスは、儲からないでしょうが、それを実行することで、新しいビジネス、つながるビジネスがあると思っています。自分でも予想できない「こと」が起きるはずなのです、人生は。 費用の課題はいつもついてきますが、クラウドファンティングを行ったり、これを読んだ寝具関係者がスポンサーになっていただけないか?と勝手に期待もしています。民泊申請したことで、ワクワク、ドキドキすることが起きそうなのです。