自宅をもっと利活用させたい

自分が設計、施工した建築物は、誰もが大好きになってほしいし、その建物がどれだけ大事に使われ、長く利用していただけるかいつまでも気になります。解体されたり、空き家になったりすると悲しいものですね。私も40年以上前に設計した住宅やアパートがあり、建売住宅を入れると700棟ほど関わってきたのではないかと思います。たった40年でも解体されている事実があると残念で仕方がない。最近はGoogleマップで確認できるだけについつい追跡してしまうのです。事情があって、売買するのは仕方がないと思うのですが、明らかに空き家になっていたり、維持管理されていない建物になっていると、何とかならないかと思ってしまうのです。

私が今までお手伝いしてきたのは、30歳代に初めて自宅を持つというご夫婦が圧倒的に多い。結果、20年を過ぎたあたりから子どもたちが独立しはじめ、60歳を迎えるころには、子ども部屋が物置になり、掃除もほとんどしなくなる。ほとんど使わない荷物があふれ出します。人間中心で考えると仕方ないでしょうが、家の気持ちになると、「もっと活用して、もっと役に立ちたい、大事にしてよ」という声が聞こえるのです。設計という職業柄、家というものをもっと人のために役立てたいのです。

私の住まいも築30年を過ぎました。バブル崩壊後、まだまだ金利の高い時期であり、130万戸以上供給されていた時期に、建築条件付き分譲で購入しました。住宅ローンが終わると同時に、子どもたちが独立し、空き部屋となってしまいました。自分で設計した家なので、違った形で活躍してほしい。そこで、断熱改修工事を行い「断熱改修体験館」としました。「全館快適空間」とし、リビングを設計事務所と「barヨシロー」に変えたのです。そして、物置化していた子供部屋の一室を宿泊施設「民泊ヨシロー」にリフォームしています。子供たちとの思い出があるどうしても捨てられない荷物は、すべてロフトへ収納したのです。少しずつですが、隅々まで活用できるようにしていきたいと考えています。

手を加え、活用を目指すと、家が生き生きしてきたように見えるのです。誰かが来ると思うと掃除も積極的に行うので、家を大事にしている感覚が戻るのです。「断熱改修体験館」は、プロの皆様に体験していただきたい、泊まっていただきたい、九十九里名物を食べていただきたいからですが、自分でつくった家だから、自慢もしたいし、もっと輝かせたいとの思いです。もちろん、東金という住宅地にわざわざ宿泊者が来るかどうか?という問題はありますが、このようなエリアでも、地域を知って、特長を出し続けてみようと思っています。キーワードは「楽しい、居心地が良い」であり、それを演出しようと思っています。

私の家の事例は成功するかどうかまだわかりませんが、「持ち家」をもっと活躍させることができれば、日本の住宅事情もライフスタイルも大きく変わるのではないかと思うのです。消費者も、もっと気軽に生活拠点を増やすことができれば、大都会だけでなく、地方の自然を満喫できる生活が二重で享受できると思うのです。日本人は、物質的に豊かになっているものの、心が豊かになっていないのは、生活に「楽しいこと、すてきな出来事、役に立っていること」といった、「こと」が体感できていないからではないかと思うのです。ベースにあるのは、他人との関わりであり、自分の居心地の良い場所が必要であり、それが今の自宅でできればよいのではないでしょうか。

民泊以外でも「専門の事務所」「素泊まり施設」「グループホーム」「ペットカフェ」「音楽や絵画教室」「工房」など、できることはたくさんありますよね。もちろん、ビジネスとして成功すれば長く活用もできますので、まずは、施主に「持ち家を活用させる」ことを意識させたいものです。それが、住宅会社や設計士の使命の一つであると考えています。「日本の今ある住まいを、もっと活躍させよう!」といったキャンペーンでもやりましょう。

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