65歳からの起業
令和に入り、「人生100年時代」が現実味を増してきました。私が生まれた1958年頃は、サラリーマンや公務員といった職業が日本の中心になりつつあり、日本経済を支える中流社会が構成され始めた時期でした。それなりの企業では、終身雇用や定年制度、退職金、そして年金といった新たな社会保障制度が確立され始めていたといいます。安定した生活を求めるなら、サラリーマンや公務員といったレールの上を歩くことが良いとされました。確かに、その時代はそれで良かったのではないでしょうか。当時は、定年が55歳、男性の平均寿命が65歳前後でした。退職金と年金があれば、十分な老後を迎えることができましたし、家族も安心でした。しかし今は、定年が65歳にまで伸びたものの、平均寿命は82歳、いや、これから65歳の定年を迎える人は90歳くらいまで普通に生きていくことになる時代です。それも健康ならばいいものの、介護や病気、認知症といったことが当たり前になってきたことも確かです。退職金、年金だけに頼る時代ではないのです。もはや、1960年前後につくられた社会保障制度に限界が来ていると考えています。企業に自分の人生を任せる時代ではないと考える人たちが増えています。
そのようななか、私も数年前から、N社に65歳まで勤めたらその後の人生をどのようにしていこうかと考えるようになり、今年、起業をすることにしたのです。入社時から、できる限り早く、自分で会社を持ちたいと思っていましたが、結婚し、子どもが生まれ、住宅ローンで家を持ち、単身赴任で20年、気付いたら定年近くになっていたのです。あの時代につくられた日本の社会保障制度に乗っかっていたのです。もちろん、定年まで勤めた大きな理由は、「自分でデザインした仕事を任され、どんどん面白くなった」「どの部署にいても、部下に恵まれ、居心地がよかった」といったことが大きな理由ではありますが。
65歳からの起業は、無謀だと考える人もいますが、体も頭も元気なうちに、一生涯続けられるライフワークをつくれば、豊かな人生を歩めると思うのです。人生をかけた勝負に出るといったことではありません。「自分の好きこと、今まで培ってきた得意なこと」を使って、もう少し「好きな人、好きな会社」を応援していこうといった気持ちで起業するのです。「ひとり不動産コンサル」といったビジネスモデルを、自分で実践し、普及させていきたいというのが、私の起業コンセプトなのです。好きなことは、「好きな人・会社と好きなビジネスを行うこと」であり、得意なことは「木造住宅・建築、土地活用、収益建築、耐震・断熱改修設計」だと理解したのです。そこで、会社を立ち上げ、一級建築事務所として登録し、10社程度の企業に絞らせていただきながら実行していこうとなったのです。今は、その活動に一環として、一方的かもしれませんが好きな企業へ面談を求め、社長たちのビジネスへの思い、将来の方向性などの聞き取りに努めています。そこで、私の得意なことが役に立つのかどうか、そのような需要はあるのかどうか、試行錯誤を繰り返しています。おかげさまで、手ごたえが良く、いくつかの企業の応援ができそうです。
会社の名前は、「株式会社鈴木芳郎」、建築事務所は「一級建築士事務所住まいるDesign」にしました。それは、設計事務所だけでなく、その延長線でビジネスを考えていることもあります。会社の名前は、今までの人的ネットワークの中で「○○会社の鈴木芳郎」から「株式会社鈴木芳郎」へと変えたかったのと、ネットでは「耐震の鈴木芳郎」でも検索できるので、それを活用しようと考えたのです。「住まいるDesign」は、住宅や建築で「お客様の笑顔をデザインしたい」からです。この設計事務所に関わる人の「笑顔」をどんどん増えるようにしていきたいと思っています。
まだまだ、始まったばかりですが、「ワクワク、ドキドキ」を継続していけるように、皆さんのご支援をいただきながら、進んでいこうと考えていますので、よろしくお願いします。