地方都市におけるマンション販売支援

かつてのN社の分譲住宅やマンションの販売方法は、徹底した宅配チラシ反響です。小学校学区内をターゲットとして、市場調査を兼ねながら、営業担当自らが街を見て廻るのです。チラシの内容は、第一段階が告知活動、次は問い合わせ、そして最後はモデルルーム来場に結び付ける手法です。販売担当が、街を好きになること、競合先を知ること、住まわれているお客様の生活を知ることができるからです。そんな営業手法が根付いていますが、それでも地方都市で100戸超えるマンションや戸建て分譲住宅は、広範囲からの集客にならざるを得ません。順調にいかない物件では、慣れた営業手法とは違う形で支援をすることが求められていたのです。

20年以上前、宇都宮市の郊外型マンション販売のツールの一つとして、集客活動と合わせてモデルルームの来場客に街を知っていただくために、「ガイドマップ○○町」を作成しました。作成にあたっては、販売マンションから歩けるエリアに絞って、話題の店を取材して廻ったのです。行列のできる店を第一に、「ガイドマップ○○町」に無料で広告を出せますと説明し、完成したガイドマップをお店においてもらうのです。行列のできる話題のお店からご紹介をいただいて、最終的には、30店舗を載せることになりました。

完成した「ガイドマップ○○町」は、カラーA3判の六つ折りで、専用スタンドに建てられるようにしました。30店舗による「街の便利と快適さ」の情報に加えて、時刻表(バスと電車)、マンションのモデルルーム案内が載っています。店舗は1業種1店舗にして、ステーキ、ラーメン、寿司、蕎麦をはじめ、ライブハウス、学習塾、美容院、ベーカリー、お茶、武道場、私立保育園など、幅広く掲載しました。モデルルーム来場客には、ガイドマップと一緒に各店の割引券をお渡しし、お互いの集客につなげていったのです。地方都市の100戸規模になると、完売にはどんなに早くても半年以上かかります。その期間、マンション関係者(施工、営業)は、ガイドマップに載っているお店を利用することになり、掲載させていただいたお店も、マンション販売に協力的になっていただけるのです。中には、営業ツールを置いていただけるようになったお店や、身内へ案内するといった現象も起こってきたのです。将来、100組のお客様が増える可能性があり、お互いWIN-WINの関係を構築することができるのです。

次に行ったのが、ターゲットエリアの町内会等への「回覧板」のファイルケースの寄付です。もちろん、町内会の会合等を訪問して役員にお願いするのですが、町内会や市町村は資金的な余裕がなく、古いまま使っているケースが多く、新品はとても喜ばれるのです。条件として、表紙の裏側にマンション広告を入れさせていただいたのです。口コミで、いくつかの町内会からオファーがあったほどです。町内会との縁を活かすこともでき、お互いのイベントに参加できるようになったのです。
上記2点は、低コストでの告知活動の一つです。日照権などで揉めることがある近隣ですが、街全体で考えるとお客様が100組増えることは、喜ばしいと考えている人がほとんどです。その人たちを味方に付けることができれば、販売もしやすくなると考えたのです。今では当たり前のように行っている会社も多くあると思いますが、20年前は、新しい告知方法はないかと悩んでいたことも確かなのです。その思い付きを形に変え、行動に移したのです。

結果はどの程度あったのかはわかりませんが、告知活動の一助にはなったはずです。時代は変わっても、告知活動、反響、モデルルーム案内、商談、契約といった流れは変わりません。最も大事なのは、いかに費用をかけずに告知活動ができるかなのです。一般的な広告媒体では、驚くような金額になってしまいます。今は、SNSを駆使して告知活動をすることがありますが、商圏内の味方をいかにつくるかを同時に考えてほしいものです。