ターミナル駅歩いて5分、好立地の活用

人口60万を超える船橋市。その中心である船橋駅から5分の好立地でありながら、メイン通りから一本逸れた細い二項道路に面した30坪に満たない狭小地では、どのように活用すべきか考えてしまうようです。もともと古い木造の店舗があり小料理屋などが借りていたようですが、残念ながらお客様が入らないので頻繁に入れ替わっていたようです。そこを地元の優良な不動産会社が買い取り、有効活用すべく提案を求めていました。私が相談に乗る前、ある設計事務所が容積率をできる限り使う方向で鉄骨3階建ての企画提案をしていたようで、建築のコスト高に苦しんでいました。土地価格と建物価格を合わせるとそれなりの総額になり、家賃収入からの利回りが思いのほか伸びないのです。

 当時、木造専門施工会社の社長だったこともあり、木造建築として企画提案するということで関わることになったのです。マーケティング(市場調査)すると、貸店舗では駅に近いほど、1階部分とエレベーターのない2、3階部分では驚くほど家賃単価に差が出ます。また、小さな店舗ほど、共同の階段面積比率(延べ床面積と比較)が高くなり、施工費比率が高いだけでなく、貸賃料が取れない施工面積の比率を高めることになると気づいたのです。そこで、共同階段のない長屋の2階建てを基本にし、家賃単価の良い1階部分を建蔽率ぎりぎりまでとれるようにしたのです。とにかく1階の貸床面積を大きくすることが家賃収入の確保になると考え、施工コストが高いにもかかわらず家賃単価が低い3階部分をつくらないことにしたのです。

1階は、最も賃貸単価が見込める15坪程度にして、飲食店をターゲットにしました。2階は、借り手側のターゲットを変えることにし、賃貸床面積を大と小の2室にしました。鉄骨造の共同貸店舗と比較して、年間の予定家賃収入は75%程度になりましたが、建築費用は40%程度で済み、土地の費用を含めても、十分に採算がとれることになったのです。流石、優良な不動産会社だけに決断は速く、提案した内容をすべて受け入れていただき、貸店舗3室、2階建て木造建築で事業化することになったのです。

 また、募集に当たっては、賃貸住宅募集会社ではなくテナント専門募集会社を利用することを提案しました。というのは、建築中に募集をかけることで賃借人が早く見つかれば工事内容がダブることがないのと、テナント募集会社は賃借人を見込客として抱えているケースが多いのです。「新規の募集が出てきたら、教えて」と依頼している人が多いのです。結果、予想通り、1階も2階も早いうちに賃借人が見つかり、お互いダブらないように工事範囲を決めていくことができたのです。オーナーである不動産会社の担当者には、予想以上のスピードに喜んでいただけたのです。

 今回のポイントは、①鉄骨建築から木造2階建て建築にすることで大幅なコスト削減、②店舗は1階の賃料が高く取れるので、できる限り1階の貸床面積を増やす、③2階部分は階段も貸面積(専用にする)にする、④ターゲットを明確にして室数と床面積を決める、⑤募集はテナント専門会社を活用する、といったことではないでしょうか。

 現在はSNSを活用して集客を行っているお店が多く、通りすがりのお客様を期待することは少なくなってきています。しかし、駅から近いことは最大のメリットであり、裏通りに面した小さな土地の活用方法はあると思うのです。そのような土地は、建築容積ではなく投資コストを優先すべきで、木造建築が最適だと思っています。その後、同じような条件の土地活用を一つのビジネスモデルとして構築し、数件請負っていきました。

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