メゾネット型賃貸住宅は、太陽光発電とW収入源に
東日本大震災によって、日本のエネルギー政策が大きく変わりました。各地の原子力発電が稼働しなくなり、コストが高いとわかっていても、緊急的に天然ガスや石油などの火力発電に依存せざるを得ない。一方で、クリーンエネルギーの普及が叫ばれ、太陽光発電設置への補助金や全量買取制度などが広がりました。

そのような時、鶴見様と面談する機会を得ることができたのです。鶴見家は、横浜で代々農家を営む地主であり、ご主人が定年退職を迎えたのをきっかけに、父親から「大家さん」を引き継いだのです。奥様と二人で数件のアパートや貸店舗を経営していました。しかし、築40年以上の木造アパートもたくさんあり、建て替えの時期になってきていたのです。古いアパートの入居者に、ほかに持っているアパートに引っ越してもらって建て替えていく方法で考えており、その1棟目に巡り合ったのです。

建て替える上で、このエリアに最も適したアパートは何か?鶴見様も慎重に検討していたのです。まずは、賃貸住宅事業のマーケティング(市場調査)を実施しなければなりません。需要と供給、賃料設定、資金計画、事業収支もにらんで間取りや戸数などを決定しました。駅からはバス便ですが本数はたくさんあり、徒歩5分以内の国道のバイパスには、スーパーや飲食店、ドラックストアなどなんでもありました。また、駅周辺には、ワンルームが大量に供給され、ファミリー向けは不足気味ですが昔の2DKはそれなりに存在していたのです。現地は、第一種低層住居専用地域の住宅地でもあり、駐車場付きのファミリータイプが適正だと判断し、床面積と賃料設定を行いました。

木造建築は、2階建てであれば低コストになり、断熱性能や耐震性能もつくりやすい一方、遮音性能は軽い分だけ劣ります。そこで、需要はあるものの供給が少ないメゾネット型の2LDKにしたのです。また、賃貸住宅の大きな欠点の一つは収納が少ない点ですが、固定階段付きのロフト(6畳程度)にすることで改善、その上、小屋裏利用のロフト形状から片流れ屋根にすることで、太陽光発電を9kW程度設置してサブ収入にしたのです。太陽光発電パネルは、ロフトの暑さを緩和する二次的効果も見込みました。そして、事業収支計画や、施工金額、間取りの詳細、銀行融資交渉など、数回の打ち合わせを経てご決断いただき、チャレンジすることになったのです。
数か月後、太陽光発電付きメゾネット型賃貸住宅は完成し、賃貸募集から賃貸管理(オーナー代行)、建物管理(外部清掃など)まで任せていただいたのです。引き渡しでは、家族みんなで見学に来て、賃貸住宅なのに温かい住まい、大きな収納、遮音性能などを体験していただきました。奥様から「私、こっちに住みたい(笑い)」と言っていただき、二人の笑顔をいまでも忘れることはありません。少し時間はかかったものの、他の賃貸アパートと全く違う層の入居者がそろったのです。

それをきっかけに、鶴見様家族とは長くお付き合いさせていただくことになり、いろいろな提案をさせていただきながらも、食事に誘われたり、野菜をいただいたりという関係になっています。数年後にアパートの発注だけでなく、自宅のリフォーム、駐車場舗装などもお手伝いさせていただきました。また、関係者を紹介いただき、分譲住宅購入、中古マンションなど、「住まいのことなら、何でも」と相談をいただくことになったのです。
私にとっても、W収入企画提案は、非常に大きなチャレンジでしたが、鶴見様の案件で自信になり、その後、他でも数棟受注することになったのです。