社員寮建築から賃貸住宅へ

千葉の総武線快速が停車する四街道駅から徒歩10分の場所に、事業を撤退した会社の所有で約200坪の売地があったのですが、メイン取引先の銀行として、土地の有効活用を考えていたのです。金融機関は、いつの時代も業績の良い会社へ設備投資や人材確保のために融資を行っていきたいものです。業績の良いA社は設備投資を行う情況ではないが、人材確保のために策を練っていたようです。そこで、寮を持つことで、若手社員の福利厚生になると考え、メイン銀行と話を進めていたのです。土地情報とともに寮の企画提案を行ったのですが、数社の中から、私が社長を行っていた会社に決めていただいたのです。

企画提案は、完全な寮ではなく、賃貸住宅でありながら、自社寮にもなる建物にしたのですが、それは何人の社員が入居を希望するか、不明確な状況であったからです。折角、会社が良かれと思って用意しても、入居しないことも多いのです。しかし、新規採用時には、寮が用意されているのはメリットを感じるはずであり、賃貸住宅の入居者が決まりづらければ、寮として使えるようにしておいたのです。市場調査から、駐車場を確保し、小さな1LDK(40m2前後)の6戸の重層長屋にしたのは、独立性を担保(道路から直接玄関、共有部分がないためオーナーの維持管理がない)独り住まい、若夫婦でも満足いただけるようにしたかったのです。2階はロフトをつけ、二人住まいでも十分なスペースを確保したのです。数か月後、建物が完成し引き渡したのですが、引き渡しと同時にすべてに賃貸人がつき、寮にするまでもなく、賃貸事業として成り立ってしまったのです。もちろんオーナーとしては投資利回りも良く、喜んでいただけたのです。

今回の事例は、企業、金融機関、賃貸募集会社の3社ともメリットがありました。一般的に「賃貸経営」を勧めても、企業にとって「利回り」「ビジネス性」が優先されますが、今回はあくまでも福利厚生(人材確保)の意味を持っている。金融機関も「融資の回収」が優先され、戸数の少ない賃貸住宅はリスクが高いと判断され、サブリースを望んできますが、長い空室は「寮」になるので、空室率のリスクを考えなくていいのです。賃貸募集会社も空き室リスクがないとなると「強気の賃料設定」を提案できるからです。もちろん、本来の事業が成り立っている、人材確保に苦労しているといった状況があるからだと理解していますが、実はそのような会社はたくさん存在しているのではないでしょうか。しかし「寮を優先すると、不便でも土地価格の安い立地で済ませようとしてしまいます。建物も費用かけず、狭い居室にしてしまうことが多いのです。市場調査を優先し、賃貸住宅に活用を変えても十分に事業採算になるようにしなければならないのです。本業が躓いたとしても、投資利回りが良ければ、この土地建物を換金することもできるからです。

数十年前までは、人材確保のために「社宅」や「寮」を所有するといった企業が多く存在しましたが、現在は、社宅ではなく、民間の賃貸住宅補助制度になっています。一度、所有すると数十年後には、負の遺産になってしまっているケースが増えたから、不動産の専門でない企業が所有から補助金制度に変えたのです。ここ数年は、寮や社宅やその跡地の多くが売却されているのも事実です。不動産の知識を持たない企業が、土地や建物を所有することを懸念する風潮ですが、専門の不動産会社と一緒に取り組めばリスクを回避することができます。貸家、借地、リースやレンタルといったビジネスは、昔から存在しており、これからもなくなるということはないでしょう。しかし、「自社にとって」「所有者の俺が決める」といったことではなく、市場や社会からの評価も見る必要があると思っています。不動産というものを冷静に見て、将来に渡って、誰もが活用したくなる不動産に変えてほしいのです。

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