公私で、信頼を得る行動

外房の漁業の町、勝浦の出身ということもあり、子どものころから祭りの時期になると地元の神社へ集まって、神輿を磨いていました。大人たちも休業しますが、小学校も休みになり、勝浦を出ていった大人たちも戻ってくるので驚くほど賑やかになり、祭礼の日が楽しみで仕方なかった。前日には、子どもたちだけで行う「宵祭り」という儀式があり、「明日は神輿が出ます」と町を練り歩くほどです。もちろん、中学生、高校生になっても年に一度の神輿を担ぐのは楽しみだったのです。

子育てが終わるころ、自由な時間を持ち始めたこともあり、大好きだった神輿をもっと担ぎたいと思い、住まいの近くにある田間神社の禰宜(ねぎ)になり、深川の門前仲町の神輿同好会に入会したのです。それから20年以上になりますが、年に10回くらいは東京中を遠征してまで担ぐようになっています。田間神社の禰宜も、同好会のメンバーも神道に心酔しているわけではなく、ただ単に祭り好き、神輿担ぎが好きなのです。男性だけでなく、女性も気風が良く、気持ちの良い行動を好むのです。

そのような中、同好会の重鎮が単身赴任から戻ってきました。定年退職近くになったこともあり、夫婦二人の住まいを探していたらしく、「マンションを探してほしい」と話しかけられたのです。条件は、三鷹にある神社と門前仲町にある富岡八幡神社の双方に電車で直通という難題でしたが、私が勤務していたN社が、井の頭公園の近くで新築マンションを販売していたのです。販売責任者に確認すると、40戸弱と小さなマンションということもあり、既に完売して完成・引き渡しを待っているところだったのですが、2週間ほど経ってからキャンセルの連絡が入ったのです。井の頭公園を抜ければ、吉祥寺駅まで15分程度と歩くこともできるし、三鷹駅からはバスが頻繁に出ている立地です。三鷹駅、門前仲町駅にも直通で行くことができるのです。さすが江戸っ子です、びっくりするほど判断が早く、内覧も十分ではない中、購入していただいたのです。それからいろいろありましたが、20年後には道路を挟んだ向かいの工場跡地に、大手デベロッパーの大型分譲マンションと大型スーパーができ、不動産価値が驚くほど上がったのです。年齢を重ねたことから、井の頭公園が毎日の散歩コースになっており、購入前にマンションを見ていなかった奥様も今は大喜びです。

神輿の同好会という「趣味」の世界ですが、重鎮とは長く趣味を共有したこともあり信頼関係を築くことができ、また、マンション分譲や戸建て住宅を生業にしていることを公開していたことで、相談されることになったのだと感じています。良い意味での公私混同をしていた結果だと思うのです。同好会員とは、このようなマンションの販売だけでなく、自宅の仲介や相続による土地有効活用、ご子息の新築住宅相談の実績も出てきています。

仕事と私生活を分けたがる人たちがいますが、地域密着の会社、小さな会社であればあるほど、良い意味での公私混同は行っていかなければならないと思っています。会社を経営する以上、関わる人すべてがお客様になる可能性があると考え、対応する必要があると思っています。小さな会社ほど、広告宣伝費もかけられませんし、新しいお客様と知り合う機会は少ないからです。私も30代前半で、分譲住宅の営業所長になっていから、24時間365日、「土地をどのように仕入れるか、自社物件を如何に販売するか」を意識して行動していました。ビジネスとはあまり関係ない、親戚や小学校からの友人たちにも「良い物件なのだ」と言い切っていました。子どもたちの運動会やイベントに行っても、「東金で分譲住宅売っています、○○の父です」と自己紹介をしていたほどです。繰り返し行動していると、いつかは私自身を覚えていただき、実績に繋がってきたことを覚えています。もちろん、信頼や物件の良さ、タイミングなどはあるものの、相談件数が増えたことは確かです。起業してからは、通っているゴルフスクールメンバーの住宅相談を受け、リフォーム工事に繋がっています。 どのようなビジネスでも、お客様と知り合うことができれば、契約することのできる、クロージングが得意な人はたくさんいます。しかし、そのお客様を探す「探客活動」が最も難しいのです。私生活から、信頼を構築する、自分の得意なことを公開する必要があると考えていま
