買取り再販住宅から、○○分譲へ
分譲住宅の施工を請け負う会社の社長をしていた時、何とか特命で受注できないかと頭をひねっていました。単純な受注では、ライバル会社と比較検討され、価格での戦いになるからです。それでは、利益の出る会社に生まれ変わることができないのです。下請けというレッドオーシャンから、一部でも良いので脱出していきたかった。発注者である分譲住宅会社は、「早く売れて、利益を確保できるか」だけが興味の対象です。どんな話を勧めても、鈴木さんの提案を受け入れたら「私の会社はいくら儲かるの?」という会話になります。しかし、そのような提案ができれば、建築に関しては任せていただけるのではないかと、日ごろから思っていたのです。
言うまでもなく、分譲住宅会社が最も耳を傾けるのは、販売土地の情報です。その土地で「儲かる」となれば、事業が進み、ほとんどの提案を受け入れてくれるのです。そこで、中古住宅を購入し、リノベーションして再販する専門会社へ訪問して、情報をいただくことを意識して行っていました。物件の中には、解体を余儀なくされる中古住宅があるからです。それをベースに、分譲住宅を企画(区割りや間取り)して、分譲住宅会社へ持ち込むようにしていたのです。買取り再販では1棟が当たり前ですが、その土地を2区画に区割りして、2区画の分譲にするといったものです。ここまでは分譲住宅の施工会社として行いますが、3階建て分譲をしたことのない会社へ、3階建ての提案や貸店舗の提案などもしました。そのために市場調査(マーケティング)を物件ごとに丁寧に行っていました。それが説得力になるし、納得もしていただけます。
A社は、千葉市の快速が停車する駅から歩いて5分、55坪の土地を35坪の古屋付きで購入したのですが、建物の不同沈下が酷く、増築部分が違法建築であったこともあり、解体更地にする方針に変わったのです。1棟の新築分譲にするとそれなりの価格帯になってしまうということで、相談があったのです。2区画の狭小3階建てを企画して提案すると、分譲住宅会社B社に土地を購入いただき、建築工事を受注させていただいたのです。それまで、最寄りの駅周辺には3階建て分譲がなく、不安視していましたが、分譲住宅の総額に大きく差が出たため、チャレンジすることになったのです。結果、早期に販売できました。
横浜のある駅から徒歩3分、裏通りに面する土地20坪の古屋付きも上記と同じような状況でした。これは、1階を貸店舗とする併用住宅の分譲として企画したのです。分譲住宅会社C社に理解いただき、建築確認を取得したところ、着工前にお客様が付き、予定通り建築工事を受注させていただいたのです。関係各社が喜んでいただけるような結果となりました。
もはや一般的な分譲住宅案件では、差別化ができず、施工専門会社として受注するには、価格競争にならざるを得ません。そうなると、受注はできても利益が十分に確保できないといったビジネスモデルに組み込まれてしまいます。徹底的に市場調査を行い、「その土地が最も生かせる建築は何か」を組み立てていくしかないと考えています。住宅一本ではなく、貸店舗、介護施設、アパート、倉庫併用なども可能性があるでしょう。企画・プラン・施工費などを組み込んだプレゼンを、建築側から不動産側に提案する機会は増えており、特命での受注が可能になってきたことは良かったと思っています。
笑顔デザイナーは、一般的な分譲住宅だけでなく、注文住宅、賃貸住宅、貸店舗、応急仮設住宅なども手掛けてきました。すべての建物は土地の上に建ちます。今までは、土地分譲のような開発が盛んに行われてきましたが、今後は、開発物件ではなく、1区画ごとの土地の活用が中心になっていきます。その土地の持っている特性を生かし、「最も生かせる建築は何か」を提案できる会社が生き残っていくのではないでしょうか。