新築ビジネスへの挑戦

十数年前、元N社社員であったAさんは、家庭の事情で転勤ができず、泣く泣く退職して起業しました。もともと外構工事の企画が得意であったため、外構工事の受注をメインにしていました。数年後には、建物のリフォーム工事を一緒に頼まれることが増え、職人を抱えるほどになっていたのです。それでも、建築本体のことは、知識も少なく、どのようにお客様を探したらよいのかもわからず、取り組んでいなかったのです。そんな時、展示会で知り合い話を聞くと、「新築ビジネス」にチャレンジしたいという強い気持ちがあったのです。そこで、私が在籍していたN社のサポートシステムというサービスで、応援することになったのです。

応援する上で、まずは社員をはじめ関係者の前で「社長の覚悟」を話していただき、共通の課題を認識していただきました。「会社が成長するためには、どうしてもこの新しいビジネスにチャレンジしたい」ということを宣言していくことが、成功に導くと考えていたからです。社長が一人で考えても、なかなか前に進まず、「イライラ」して社員に当たって失敗するといったことをよく見てきました。強い気持ちが通じ、社員と関係者が一つになって、チャレンジすることになったのです。

次に、社員中心で商圏内の市場調査を行いました。数字的なこともありますが、最近建った新築住宅の間取り、デザインなどを集めていただいたのです。他社を知ることは重要なポイントであり、それらの間取りやデザインから学んだのです。その次は、自社の特徴、メリットの議論です。社員、関係者だけでなく、今まで発注いただいたお客様からのアンケートを取り、明確にしていったのです。自社のつくる家がお客様にどんなメリットをもたらすのか、なぜお客様が選んでくれるのかといったことです。

そして、お客様に説明できるプレゼンの整備を行うのですが、「会社の特長」を誰もが同じように説明できるようにしたのです。会社が存在する理由、永く地域に選ばれてきた理由などです。施工体制、アフターサービスなども含まれます。これがもっとも重要であり、必ず説明をしなければならないことなのです。また、商品づくりはコンセプトを明確にして、標準的な間取り、外観、標準仕様、標準価格を提示できるようにしておきます。A社は、会社の名前に含まれる「エコロジー」、「エクステリア」、「職人の手作り」を持ち合わせた商品になったのですが、どこまで組み込むのか決めていったのです。

一方で、お客様にどのように知っていただくのか、集客の方法、スケジュールをつくっていきました。小さなステップでも行動しなければ、前に進まないのです。モニターキャンペーンを実施し、外構工事での取引先である不動産会社や社員、社員の家族、金融機関などへ告知をしました。とにかく近い関係である人から行っていったのです。その甲斐あり、社員の家族から広告塔としての価格で受注をすることができました。この1棟の受注は大きく、消費者向けイベントを月に一度程度仕組み、繰り返し案内を行いました。「基礎工事を見よう」「上棟式、餅撒き」「断熱材とその体感」など、竣工するまでいくつかのイベントを組んでいったのです。そのたびに、現場の掃除をすることにもなり、きれいな現場を実現できたのです。案内は、「近隣へのあいさつと一緒に」「外構のOB施主様に」「取引先へ」とコツコツと行うことを実践しました。一人でも二人でも来ていただくことが大事なのです。 最後に「完成見学会」を二日間に渡って行うのですが、プロ向け(関係者・金融機関・業者など)と消費者向けに行ったのです。過去に一度は接点を持ったお客様には、できる限り足を運んでいただき、見ていただくことが目的ですから。社員は自ら行動し、行きつけの「美容院」「居酒屋」などにチラシを置かせてもらったりしました。二日間で50組程度の案内ができ、告知活動は成功しました。しかも、それで終わりではなく、建材問屋の展示会案内をバスで行うことで、新築住宅だけでなく、キッチンや浴室のリフォームビジネスにつながったのです。A社は、今でも消費者向けのイベントを大事にしており、ビジネスにつなげています。

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