お断りから始まる
経営やビジネスの方針とともに、組織というものは数年の間に状況が変わります。分譲住宅会社が、注文住宅の受注を増やすために子会社をつくる。逆に、注文住宅会社が、ブランドイメージを落としたくないとローコスト住宅の子会社を設立したりします。また、注文住宅は在来工法だが、賃貸住宅は2×4工法に変え、プレハブ会社が在来工法に進出するために別組織をつくります。そのような形で子会社がどんどん増えたりします。しかし、事業化するもののうまくいかず、本体に吸収合併されるといったことはよくあります。
N社も当時、手間暇かけて、じっくり行う住宅事業を子会社化していましたが、利益が出るまでにいかず、本体の土地活用による受注部門と合併したのです。会社が変わろうが、同じビジネスを引き続き行っても利益が出ることはない。しかし、OB施主様と見込みのお客様は、将来の利益を生み出す源泉になります。そこで、できるだけ多くのお客様を直接訪問し、「思いを聞く」ことを最優先で行ったのです。
OB施主様には、発注いただいた感謝と置かれた状況を説明し、現状困っていることはないか?を聞き出すために。また、見込みのお客様とお断りのお客様には、新しくなった組織でお役に立てることはないか、なぜ前の組織で発注いただけなかったのか?を聞きたいのですが、ほとんどの人は会ってもらえないのが現実です。それでも、面談することができた人には、選択の一社に加えていただいたことの感謝を伝え、話を聞かせていただきました。その中の一人である川崎様は、今まで駐車場であった土地をもっと有効活用したいと考えていたのですが、建築費用による事業収支の課題、土地の持っている課題、近隣との問題などを解決できずにあきらめかけていたのです。当社も、その3点を解決できないからと、受注をあきらめていたのです。
土地の課題は、隣接するO電鉄との境界が不確定なことと、開発によるF市からの要望事項です。O電鉄は大きな会社だけに決裁が下りるまでの時間を要する、担当者が転勤してしまうという悪循環があり、手をこまねいていたのです。また、近隣が数年前に境界同意をしたのですが、「納得がいかない」と、ほかの数人を巻き込んで建設反対運動を行っていたのです。そのような状態ですから、土地活用を半分あきらめかけていたのです。
しかし、一つずつ問題を一緒に解決して行くことに同意していただいたのです。近隣問題では数回説明会を開催し、隣接地以外のお客様には理解いただき、隣接地とは弁護士を入れてまで交渉をしました。O電鉄も開発業者の粘り強い交渉で解決し、開発の許可が下りました。時間を要しましたが、川崎様の要望を組み込むことができ、着工に漕ぎつけたのです。結果、空きの多い駐車場だった土地が、地域になじんだ共同住宅となり、賃貸人もすぐに決まりました。土地活用に成功したお客様と一緒に喜んだのは言うまでもありません。
断りが入るということは、真剣に検討していただいた結果であり、その中に課題がいくつか潜んで知るのではないでしょうか。この課題が解決できれば、事業化をするということになります。もちろん、費用対効果でそこまでできない課題もあるかもしれませんが、施主様と一緒に解決しようとなれば、ほとんどの課題が解決することができると思っています。 今回のケースだけでなく、会社へクレームが入ったり、部下が対応した案件でお断りがあると、進んで対応するようにしています。もちろん、すべての課題を見つけられるわけではないし、解決できるわけでもありませんが、全く新しいお客様を探すよりも圧倒的に時間がかからないのです。ですから、一度は大手のハウスメーカーで検討したお客様、他社と比較検討しているお客様などは喜んで紹介を受けます。金融機関や弁護士、税理士様への営業は欠かさず行っています。