駅近の狭小地活用

私が40年来通い続けた勤務地の駅は、昔から京浜工業地帯の工場勤めの人たちで賑わっていました。今でも立ち飲み店が多く、飲み物はホッピーと焼酎が中心である。さすがに駅のホームで飲む人は少なくなったものの、駅近の裏通りには昔からの雰囲気がいまだに残っています。

今回相談いただいた土地も、古い雑居ビル群にポツンと取り残された25坪に満たない狭小地。地上げ業者が、雑居ビルの買い上げとともに何度も地上げ交渉に来るほどでした。前面道路は4m、間口は6m、利活用に悩んでいた駐車場です。車も通らないような前面道路は、通勤客が抜け道として利用している程度ですが、駅のロータリーから1分と近く、大化けする可能性があります。鉄骨やRC造で高層の雑居ビルを検討していましたが、エレベーター、階段スペースといった貸せない床面積が多くなることに加え、なんといっても投資金額が億を超えてきます。土地を持つオーナーは、テナント専門の不動産会社だけに、借り手のお客様を数人抱えていましたが、小さな店舗スペースの3階、4階を借りたいというお客様が極端に少ないことを知っていたのです。

そんな時に、別件でお取り引きした関係で相談に乗ることになったのです。100㎡以下の木造2階建て、2室の貸店舗を提案し、2階には屋上をビアガーデンにも変えられるスペースも設置するプランです。間口が狭いので、2階の専属階段も室内に入れ、貸面積に入れられるように工夫しました。また、準耐火建築であり、施工はスケルトン部分だけなので、建築費のコストダウンが可能でした。結果、オーナーサイドがこの段階でマーケティングを行っていくことになり、見込み客から聞き取り調査を行っていただけたのです。

一月ほど経ってから、借り手を数組検討できそうだということで、急いで建築確認と施工スケジュールをつくることになりました。それから一月ほどで間取りを確定し(屋上スペースなし、重層長屋2室)、建築確認を取得したのです。着工して数日後には、1階の部屋に申し込みが入り、引渡し前には2階も決まったのです。一階はクラブ、2階は上場企業の事務所兼店舗となり、想定以上の利回りを確保できました。

今回は、オーナー様が所有する土地を売る気はなく、隣地を買収したいくらいの状況であったこと、木造建築で検討したことがなく、鉄骨建築では思ったような利回り状況にならなかったこと、普段のテナント仲介事業の中でお客様(2室)を確保できそうだったことなどが、ご決断いだいた要因だと理解しています。土地からの購入であれば、容積率を最大限に利用する企画立案が常識ですが、建築費用の高騰、立地によって需要と供給がずれてしまっている場合など、不動産が置かれている状況でどんどん変わってしまいます。今回のポイントは、将来、隣地の雑居ビルなどが購入できる可能性が残り、建築費の安定などを考えたとき、木造であれば壊す費用も低価格なため、新しい投資(一帯開発)も考えられるということです。日本社会の不安定な経済状況を考えると、大きな利益を求めるのではなく、リスクを最低限に抑えることが必要であり、木造建築での有効活用という選択肢を増やすことも重要ではないでしょうか。

今回のケースは稀なことではなく、日本全国どこの商圏でもありうる話なのです。便利な場所だが、狭小、前面道路が狭いなど、大手ゼネコンやデベロッパーが手を出しにくい土地がまだまだ存在しています。小さな駐車場や自転車置き場、古い住まいや空店舗などになっており、それらの土地をもっとイキイキさせるのは、木造建築を手掛けている我々しかないと思うのです。木造建築を施工する工務店様も、新築住宅一本ではなく、土地を生かすためのノウハウを持ちたいものです。ぜひとも、「笑顔デザイナー」にご相談ください、一緒にそれらの土地に関するマーケティング調査をして木造建築を提案していきましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です