相続税の解決策があるのか

2015年に相続税制が改正され、首都圏の一般的な家庭でも対策を講じる必要が出てきました。というのは、法定相続人の数にはよるものの、基礎控除額が引き下げられた上に、団塊世代が70歳を超えて被相続者が急激に増えることになるからです。国としては、取れるところから税を取りたいのでしょう。「しっかり対策すれば、今までと変わりませんよ」と告知していますが。

相続税対策は、保険や事業承継等がありますが、最も効果があるのが、不動産であることは言うまでもありません。現金や株の評価はその金額のままですが、不動産は実勢価格ではなく、評価額を下げることができるからです。特に賃貸住宅や、貸店舗、貸倉庫などは、人に貸すことでさらに評価額を下げることができます。タワーマンションが節税として注目されるのは、実勢価格とかけ離れるからです(一部改正が行われました)。実際、そのころから、相続対策としての建築請負相談が増えたことは確かです。

地方都市に住む植松さんは、N社のお客様である電気施工会社の社長でした。「賃貸住宅建築を分かる人はいないか」とN社担当者に話し、私が担当することになったのです。あるイベント会場の商談室で話を伺いましたが、企画書を提示され、「銀行とS社に賃貸住宅を勧められている、建築費が適正か、借上げ保証とはどういうものか」といった内容です。その場でいくつか答えることはしましたが、「このエリアで、土地を買って新築賃貸マンション建設?」と疑問を持ち、帰った後も悶々としていたのを覚えています。

「このままでは、失敗する可能性が高い」と思い、しっかり伝えようと次の日に電話を入れました。「一時的な相続対策にはなるが、将来、負の遺産にならないでしょうか?相続する社長さんが困ることにならないでしょうか?」と。植松社長は帰る予定を変え、再度面談することになったのです。「この地方都市は、エリアの中心ではあるものの人口8万人、人口減少は歯止めが利かず、基幹産業も観光とスキー場。明らかに賃貸住宅は余っており、将来は、さらに深刻な状況にならざるを得ない。そこに、数億円(土地建物)を投資する価値があるのでしょうか?借上げ保証は、家賃保証ではなく、数年後に収支計画が大きく変わる可能性もある。おまけに、もしもの時にそれを売ることができるのでしょうか?銀行もS社も責任は取ってくれず、相続者が負うことになる」と話し、「どうすればいいのか」となりました。2週間の猶予をいただき、対応策をもって地方都市まで提案に伺ったのです。

被相続者となるご両親をはじめ、相続人、会計士、コンサルタント会社などの関係者がそろった中で、企画書を説明しました。「今後20年は人口が伸び、賃貸住宅が不足しているエリアで、リスクが高い一物件集中投資ではなく、リスクの低い分散型投資。さらに、もしもの時に売りやすい分譲マンションや戸建て(投資家だけでなく、一般消費者もターゲットになる)、それも新築、中古、オーナーチェンジ物件の組み合わせ」を提案したのです。表面利回りも重要ですが、「相続対策と将来的なリスク回避」が重要なのです。

課題は、遠く離れたエリアであり、将来にわたって物件・賃貸管理、もしもの時の売買仲介などです。しかし、N社がその機能をすべて持っており、物件もN社の本社から車で10分以内の場所にしたのです。集まった関係者で、数日間相談した結果、「銀行とS社の提案」と比較して「鈴木さんの提案」にしようと決断してくれたのです。高齢のご両親やご家族、親戚も含め、物件の絞り込みに来場いただきました。2日間で6物件を視察いただき、そのうち4物件(新築、中古、戸建てにマンション)を購入いただいたのです。その後、賃貸管理契約を結び、募集に入ったのですが、すべてN社グループが担当しています。 その後、ご両親や家族、首都圏に住む弟さんとお付き合いをするようになり、購入物件だけでなく、自宅の件などの相談に乗るようになっています。ご両親が長生きすることを願っています。そして、植松様家族とは、長い付き合いになるでしょう。この経験をもとに、地方の方々に首都圏のマンションを買っていただけるようになったのです。

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