狭小地の2世帯住宅に建て替える

大倉様との縁は、小学校からの幼馴染である飯岡さんの紹介ですから、最初からハードルは低く、とにかく仲の良い親子とワンちゃんに対応いただいたので、居心地の良い商談でした。大蔵様が埼玉から赤羽の実家に戻ったのは、お母さんが一人住まいになったこと、子どもたちもひとり立ちが見えてきたからです。しかし、実家は古く、狭いので不便を感じていたようです。そこで、建て替えを考えるようになったのです。

赤羽駅から徒歩10分ですが、前面道路は4mあるものの、面する長さは7m程度の25坪程度の土地です。近隣商業地域、防火地域の厳しい条件の土地であり、大倉様の考えている予算も、解体、借地の承諾料などを考えるとギリギリです。しかし、飯岡さんの紹介だけに、何が何でもお役に立たなければと気持ちが入ったことも確かです。打ち合わせの中で、小さいながらも完全2世帯住宅を希望されていること、子どもたちの自立などを聞き取ることができたのです。

提案間取りは、延べ床面積30坪弱の中に、一階にワンルーム(玄関、トイレ、洗面、収納、浴室付)と大倉様世帯の1室、玄関、洗面脱衣室、浴室を配置し、2階に2室に分けられる寝室、大きなLDK、トイレ、収納、大型ロフト(家具式階段)を配置したのですが、廊下もほとんどなく、無駄なスペース一つないプランになっています。玄関ドアもつけられないので、玄関引き戸で対応するほどです。採光もギリギリ、道路斜線もギリギリ、隣地境界もギリギリ、自分でもなんとかなるものだと思った間取りなのです。1階のワンルームはお母さまが住み、将来は、賃貸住宅に変更できるように、電気も水道もガスも独立させたのです。しばらくは、大倉様やお母さま、ワンちゃんも2階のリビングに居ることが多くなるとのことで、吹き抜けや家具式階段付きロフトなどを設置し、開放感のある大きなリビングダイニングにしたのです。

融資も含め、資金計画、仮住まい先(飯岡さんの所有)なども決まって、ご決断いただいたのです。数か月後、仮住まいに引っ越しされ、解体工事、着工へと進んでいき、予定通り、完成したのです。苦労したのは、外構工事です。前面道路から玄関までのアプローチが短いので、玄関内での段差を作り、隣地との離れは、民法ギリギリ、そこに2世帯分の給湯器、屋外機、物干し、メーターなど設置するのですから、難しいわけです。しかし、職人と話しながら、数センチ単位で納め、完全2世帯住宅になったのです。

引っ越した後は、親子三人の生活から、自立していた子どもたちも泊まりに来るようになり、ワンちゃんとともに笑顔が増える家族となっていました。その後、赤羽に用事があるたびに顔を出すようにしていたのですが、残念ながら、ご病気がちであったご主人が亡くなり、長女がコロナ渦に帰ってきたり、長男が結婚したら、1階のワンルームに一時期同居するなど、目まぐるしく家族構成が変化をする中で、この小さな完全二世帯住宅が大活躍したのです。大倉様のご家族の笑顔があふれる住まいになったことで、設計者としてもうれしい限りです。 東京という大都会の街中には、このような土地が多く存在し、耐震性能や耐火性能が不十分な住まいも多くなっています。もしもの時に、間違いなく大きな被害を出す理由が、そのような住まいなのです。住まいが倒壊しなければ、死者も劇的に減少し、避難する人は少なく、悲惨な避難所も多く作らなくていいのです。大倉様のように、あきらめることなく、「稼げる家」にする、「二世帯住宅」にすることで収入を増やせば、建て替えも可能なのです。大倉様の笑顔を見ていると、このような住まいをどんどん作っていきたいと考えています。

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