新しいチャレンジを応援
赤城様とお会いしたのは、平成の終わりごろ、N社の仲介する営業担当からの相談からです。赤城様は、N社の大型マンションを購入以来、住まいのことはN社に相談いただけるというお得意様の一人です。ご夫婦で家業であるお店を営んでいますが、店舗が古くなったことで大家さんから立ち退きを言われていたのです。そこで、将来のために近くの土地を購入して新店舗を構えるという計画を立て、ハウスメーカーをはじめ何社かに提案を依頼することにしました。その一社として、N社にもお話をいただいたのです。
その土地は、片側一車線ですが、車の通りは多く、歩道も幅1.5mあり、植樹もされているような大きな道に面しています。また、病院やコンビニ、コインランドリー、事務所ビルなどが点在していますが、一歩入ると住宅地になっています。しかし、その通り沿いは防火地域にもなっており、制約が多い地形(細長い、隣地の関係、歩道の切り下げ、街路樹)でした。
ハウスメーカー数社は、ほとんどが容積率を最大限に活用して、RC構造や鉄骨造の3階建てや4階建てとする提案で、1階を赤城様の店舗、2階以上を賃貸住宅にしています。店舗のために駐車場も2台程度用意していますが、土地購入代も含め総投資額は数億円にもなる。もちろん、賃貸収入もそれなりに確保できるので、借入金は多いものの、返済可能といった内容です。私は、「こんなに借金しては、もしもの時に動きが取れなく、自分の店舗まで犠牲にする可能性(売らなければならない)はないだろうか?」と疑問に感じていました。圧倒的に、土地よりも建物への投資額が大きすぎるのです。
そこで、「木造2階建て、100㎡以下の建物を2棟。1棟は、1階を店舗、2階を賃貸1戸、もう一棟は2戸の賃貸住宅」とするプランを提案することにしました。その理由は、木造建築は防火地域内では、2階建て100㎡以下は、準耐火構造が可能でコストが驚くほど安くできること、もしもの時は、2戸の賃貸住宅を売ることで、店舗を売ることなく、借入金を返済することができるからです。とにかく、リスクを最小限にすることを勧めました。このプランでは、賃貸収入も3戸あり、十分に返済が可能なだけでなく、融資金額が驚くほど低くなったため、金融機関も融資が可能になったのです。今回は、土地購入金額と建物投資金額の比率があまりにも大きく、担保価値を見極める必要があったと自負しています。結果、決断いただき、木造で進めることになったのです。
最終的には、最初に店舗と賃貸住宅の1棟を建築して、残りの土地をコインパーキングで活用、時期を見てから2棟目を建てることにしたのです。コインパーキングでの収支もよく、2階の賃貸住宅の日当たりも確保できたのです。1階の店舗は箱だけつくり、内装専門会社へお客様が直接発注することで、コストを抑えることもできました。小さくても個性のある、素晴らしい店舗になったと自負しています。
完成、引き渡しを終え、無事に新店舗開店を迎えることのできた赤城様は、本当に喜んでいただいたと思っています(笑)。というのは、N社が引き渡して数年後に行うアフターサービスメッセージカードに、わざわざ私の名入りで書き込んでいただいたのです。本当にうれしことです。もちろん、赤城様とは、今でもお付き合いをさせていただき、商店街のこと、自宅のこと、さらに土地の情報などもいただけるようになっています。