専門紙が考える5年後

東京ビックサイトで9月に行われたリフォーム展示会と賃貸住宅フェアに足を運びました。その中で、地域密着の工務店や住宅会社向けの専門誌である、リフォーム産業新聞社と新けんハウジング社のトップ同士の対談を聞く機会がありました。彼らが予想する時代は、うれしいことに私が書き続けてきた「ビジネスコラムの内容」とよく似ているのです。キーワードは、「職人や技術者の激減」「空き家」「インバンド」「相続不動産」「AI」「リフォーム、リノベーション」といったことです。特に、技術者や職人は半減することがわかっており、多能工へ移行していかないと生き残れません。多能工は、職人だけでなく、営業、設計、監督など、一人で数役できるようになっていかなければならないというのです。元気な企業や自社の方針なども織り交ぜながら、「住宅会社」が大きく変貌していくことを期待しているようでした。そのような中、二人の経営者が、おのおの「ひとつずつ」という条件で、5年後の在り方を話してくれました。これが面白かった。

まず新けんハウジング社は、「不動産王を目指せ」と自社の商圏内の不動産ナンバーワンになることを勧めていました。地方ほど不動産が安いので、今購入しておけばビジネスのきっかけを作れるというのです。不動産仲介業への進出のための新サービス「物件王」を提供しており、不動産である既存住宅からリフォームや建築受注を狙うというものです。今では、加盟店は200社を超えているのです。リフォーム産業新聞社が提案した、「ひとりリフォーム事業」も面白かった。集客、追客や見積もりもほとんどの業務が「AI」でできる時代になっていくので、クロージングと施工の協力体制があれば事業になるというのです。ひとりで十分にできるビジネスになっていくことであり、普及していくだろうというのです。施工は多能工の専門集団に変わっていき、職人や技術者を育てる仕組みを持っている会社が生き残っていくだろうという見解でした。

今回の展示会では、セミナーもたくさん用意されていましたが、成功している会社の事例にはこれらのキーワードが含まれているのです。相続、不動産、空き家、AIなどを、組み込んだビジネスに変えたことで受注が伸びてきたのでしょう。日本全体で見れば、まだまだ世帯数も増え、インバンドも増加傾向にあるので、建築業界全体では伸びていくはずです。しかし、勝ち組と負け組が色濃く分かれていくでしょう。環境が大きく変わることは確かで、新時代が始まったと言われる所以です。それに合わせて、ビジネスの内容、組織の内容を変えていかないと負け組になるということです。2社の経営者は、地域密着の工務店や住宅会社が読者だけに、勝ち組になれるように情報を提供してくれています。素直に受け入れることが大事ではないかと感じるのです。

私が起業したとき、いろいろ考えて「ひとり不動産コンサル」と言うビジネスを成功させ、普及させていこうと思ったのです。それは、組織で必要不可欠な「人を育てる」といったことの難しさに気づいたからです。なんとなく、「自分が傲慢になっている」と感じたのです。だから「ひとり」の形をとり、それに伴って「人的なネットワーク」を作ることに注力することにしました。経費を掛けず、不得意なことには外部の力を借りることで、結果として、私の主体的な行動を付加価値として提供できると思ったのです。

また、不動産は、建築ビジネスを左右させる要素であり、建築業界は不動産業界の中にあると考えています。建築注文住宅を生業としてきた住宅会社は、「不動産屋」を下に見る傾向にあったと思うのですが、「情報が命」である限り、不動産会社を味方につけるか自分で行うしかないのです。私は分譲住宅事業や仲介事業を中心に経歴を重ねたこともあり、「土地情報を得ること」が購入していただけるお客様を見つけることよりも高いハードルであることもわかっています。今行っている「ひとり不動産コンサル」でも「不動産情報」が重要なポイントとなっています。ビジネスを行う上で、5年後を予想するのは難しい時代になったことも確かですが、今起きていることから、判断していくしかないのですが、専門の業界紙から時代の流れ、情報を得ることは必要ではないかと考えています。