上りのエスカレーターはどこにあるのか?

サラリーマン時代の約40年間、ビジネスを行う上でいつも意識してきたのが、「上りのエスカレーター」を早期に見つけること,
今は違っても作り上げることでした。いくら経験などで体力をつけても、下りのエスカレーターに乗っていては疲れてしまうからです。高度成長時代の分譲住宅、マンション、農地転用による賃貸住宅などを手掛けてきた会社は多くあります。建材や木材で言えば、在来工法のプレカット、ユニットバス、ウォシュレットの普及は、住宅が仕様規定から性能規定へ変換したからです。住宅不足の中、戦後の団塊世代、団塊ジュニア世代が、分譲住宅やマンション、新築住宅ビジネスを大きく伸ばしてきたことは確かであり、当時はそれらのビジネスが「上りのエスカレーター」であったのは言うまでもありません。

これから30年、人口が大幅に増えていく「高齢者」は、「上りのエスカレーター」であることは間違いないでしょうが、高齢者はいくつかに分かれますね。「相続か、被相続者か」「資産があるか、ないか」と、「元気=アクティブか、介護されるか」との組み合わせです。その中でも対応するエレベーターは違うのです。例えば、60歳代は相続者がほとんどであり、資産(退職金)もあるし元気です。時間も自由に使えるようになるでしょう。一方、80歳になると、被相続者になり、資産はあるが介護される側となり、決定権もなくなってしまう。この世代をターゲットにするなら「相続相談窓口」と言う機能を社内に持つことです。専門家(士業や生損業)に繋ぐ役になることで、ビジネスに変えていくのです。

二番目は、外国人旅行者でしょう。景観や食だけでなく、四季、歴史、文化も注目されていくことは間違いない。特に生活習慣や衛生、健康、介護などは最先端にあるので、それらのシステムを輸出する時代になると思うのです。三番目は、地球環境に貢献することではないでしょうか。木材利用、再生エネルギーは「上りのエスカレーター」に変わるでしょう。さらに、異常気象と言われる自然現象が当たり前になることを考えると、災害に強い「強靭化に関するビジネス」は大きく伸びると思われます。

私たち工務店経営者として、どのように考えていけばいいのでしょうか。キーワードは、上記に書いた「相続、インバウンド、環境貢献、強靭化」などです。その中の一つでも、二つでも組み込んだビジネスにチャレンジすることです。例えば、空き家を「外国人向けゲストハウス」にリノベーションするビジネスや、「街角相続の窓口店」で集客して士業につなげるフィービジネス。もちろん、賃貸住宅やリフォームが相続対応策ならば自社で受注します。断熱改修技術や耐震改修技術を武器にしたリフォームビジネス、最先端の木材やペロブスカイト太陽電池を利用した改修工事もいいでしょう。このような時代だからこそ、上りのエスカレーターを見極め、早期に乗ることをお勧めします。

分かっているけど、なかなか変えることができないのも事実です。既存の仕事がゼロにならないから、目の前の仕事に全力で取り組む。ライバル業者が廃業していくこともあるでしょうから、ゼロにはならないのです。しかし、じわじわと減少することは間違いないのです。下りのエスカレーターに乗っていると気づいたときには、事業を辞めなければならないことになるかもしれません。一歩前に出ることができない場合、他社の成功事例を見学に行くことです。日本中を見れば、先駆者が必ずいるからです。耐震技術であれば「木耐協」と言う組織に加盟すればいいし、ゲストハウスとなれば「宿泊体験」すれば良い。相続コンサルタントや相続診断士といった仕組みを学ぶのも良い。木材利用は、ナイス株式会社の研究室や総合展示会に行くのも良い。断熱改修などは「断熱材や窓」のメーカーが積極的に組織化していますので、参加するのも良い。とにかく、新しいビジネスに向って行動することです。
