健康寿命日本一から地域活性化へ

少子高齢化、人口減少が地方都市の大きな課題になっています。どこの町でも移住を推進していますが、残念ながら上手くいかない市町村が多いようです。特徴のある、良い景色、食べ物、子育て制度などを前面に出している市町村はありますが、生活費を稼がなければならない世代は、仕事場があるかないかが第一であり、ミスマッチを起こしています。一方、高齢者にとっては、「健康寿命」が生涯の中でもっとも大事なことなのだとわかっています。国が県単位でランキングをつけており、2022年は男女とも静岡県となっていますが、前面に出してアピールしている市町村は限られています。

健康寿命は、自助が最も重要ですが、共助、公助も必要な時代になっています。というのは、このままでは社会保障費(医療、介護など)が経済的にも人材的にも恐ろしいほど大きな負担になることは間違いないからです。健康寿命を延ばすには、「運動、食事、社会参加」が非常に重要だと言われていますが、「運動と食事」は地方都市ほど有利に働くのではないかと思うのです。最も良い運動は、早歩きすることであり、安全に歩く場所は豊富にあるでしょう。食事も、新鮮な野菜や魚を手に入れることは容易であり、野菜を自分たちで育てることも可能ですから。残念ながら、そのメリットを十分に生かしていないのも事実です。

自助が十分でない理由の一つが、「住まい環境」ではないかと思っています。健康寿命を延ばすために必要なものは、「快適な睡眠」と「移動しやすい室内空間」ではないでしょうか。バリアフリーはもちろん、一番の問題は、室内空気環境への関心の薄さです。建物が古い時代ということもありますが、断熱性能と耐震性能の低さは深刻であり、そして、断熱性能は睡眠にも大きく影響しているのです。睡眠は、医療だけでなく各分野で研究が進んでいます。温度と湿度だけでなく、「表面積の木材比率」「音はどうあるべきか」「光の環境」「快眠できる匂い」「寝具の役割」「熟睡できるパジャマ」「就寝体温と睡眠」など、細かな分野ごとになっているのです。残念ながら、全てを網羅する研究はほとんどないのではないでしょうか。睡眠が大事だということはわかっていますが、総合的に実践できるのは、実務を行っている我々だと思うのです。

東京エリアへの人口の一極集中は続いていますが、「快眠・熟睡」というコンセプトは、地方都市のほうが優位であることがあります。一晩中、あの騒音と人工の光の環境にいるのは、「快眠・熟睡」にとって最悪の状況であることは間違いなく、知らないうちにと体が受け入れてしまっています。科学的には証明されていませんが、長期になると、騒音や人工の光は、健康な体に影響するのではないかと思うのです。また、気圧が変わる高層マンションなども影響しているのではないかと思いますね。健康長寿を達成するために、「快眠・熟睡できる」環境、「食事」、「運動」と「社会参加」をセットにしたメニューを地方都市で提供したらどうかと思います。増加していく空き家を利用して、ゲストハウスにリノベーションすることで、年に何度か都会の住民に体験していただくというサービスです。ふるさと納税が盛んになってきましたが、返礼としてのメニューでも良いのではないでしょうか。いずれは2拠点居住でも良いし、気にいれば移住でも良い。地方の快適さを知っていただくだけでも良いと考えています。

上記のサービスは、行政だけでなく、建築業界、農林水産業、医療関係者などが協力しなければならず、地方都市の総合力が試されることも良いことではないでしょうか。日本社会の抱える課題を、東金という地方都市を題材に、活動していこうと思っています。