我々のできる地方創生

K建材様は、香川県の三豊市という人口6万人程度の地方都市で建材販売ビジネスを行っています。他の地方都市と同じように、新設住宅着工戸数は厳しく、工務店や住宅会社もリフォーム工事や修繕で食いつないでいる状況が続いています。そんな状況にもかかわらず、圧倒的な成果を上げ続けているというので、がぜん興味を持ち、視察に行ってきました。K建材様とは住構協(木造建築耐震化を進める組織)時代からのお付き合いで、取引先の工務店様に耐震診断能力を身に着けさせようと一緒に奮闘していたことを記憶しています。

K建材様の拠点は瀬戸内海に面する町で、交通の便は岡山から特急か高松空港から車で各々一時間程度と、残念ながら良い立地というわけではありません。しかし、気候は温暖であり、観光名所は「金比羅さん」「瀬戸内海の島」「日本のウユニ塩湖」などがあります。地元の工場は何社か存在しますが、多数の雇用を生む状況ではなく、漁業と観光が中心の一般的な地方都市と言えます。そのような商圏ですが、社長のKさんは、チャレンジ精神が旺盛であり、アイデアづくり、コンセプトづくりが上手いだけでなく、いろいろな人を巻き込むことができるのです。

K社長は数年前、自宅のためにロケーションの良い中古住宅を購入し、リノベーションをしたのですが、予想したよりも通勤時間がかかり、会社の近くに戻ることにしたのです。この自宅を活用しなければと賃貸に出すのではなく、「ゲストハウス」にチャレンジすることにしたのです。はじめは集客やオペレーションなどで苦労したものの、ロケーションや対応力で少しずつリピーターが増え、少しずつノウハウが出来上がってきたのです。もともと会社は、「社員、住民は家族」という理念を持っており、地域の人たちを巻き込んでいったことも、成功の要因の一つとなっていたようです。口コミが広がり、「この空き家は何とかならないか」という相談が来るようになったのです。できる限りお役に立ちたいと、住宅だけでなく、元別荘、酒蔵、店舗、旅館などを、一からコンセプトをつくり、リノベーションして再生していったのです。その結果、今では13棟の「ゲストハウス」を運営するまでになっています。空き家をリノベーションして「ゲストハウス」を運営するために、不動産部門を立ち上げ、設計事務所、工務店などとネットワークを組むのですが、建材はすべてK建材様で手配しており、本業である建材販売の業績アップにもつながっているのです。

K社長の感性はそれで終わらず、ゲストハウスでは提供しない「飲食のおもてなし」までも構築していくのです。夕食は地元の飲食店を紹介する仕組みだけでなく、「バーベキューセット」や有名料理店の「お重セット」など、ユニークな設えをします。朝食は、一般的な飲食店が朝早くから開店することが少ないことから、漁港の目の前の空き店舗を活用して「朝ラーメン」専門店を開くのです。地元の「伊吹いりこ」をふんだんに使ったスープは見事であり、今では行列ができるほどです。それだけでなく、次から次へと地域活性化のためにチャレンジしていき、成功に導いているのです。今では移住者も増え、その人たちの雇用もつくっていっているのです。そして、こうした三豊メソッドが話題になり、行政をはじめ、全国から視察団が訪れるようになっています。

日本全国、地方都市は少子高齢化が急激に進んでおり、空き家対策に苦慮しています。行政が中心になっているのは、住民税や固定資産税が伸びず、社会保障費はどんどん増えていることもありますが、K建材様の話を聞くと、民間企業や市民が中心になっていくことが重要であり、彼らの持っている力をもっと活用すべきなのでしょう。K社長は、例えば瀬戸内海という優れたロケーションをどう表現していくのか、活用していくのかを徹底的にコンセプトに落とし込み、設計してつくりこんでいく。利用客は、期待以上の非日常を体験できる。また、コンセプトに物語があるから、消費者は感動もするし、宿泊費以上の満足感を得られる。口コミも起こしたくなるのです。地方都市で抱える課題は各々違うとは思いますが、「他地域にはない、優れたもの」が必ずあり、それを磨いていくことで解決してくのだと感じました。やはり成功は「ビジョン、パッション、アクション、そしてハクション」なのですね。

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