「ビジョン、パッション、アクション」そして「ハクション」

20年以上前、NPO法人住まいの構造改革推進協会(住構協、現在は一般社団法人ステキ信頼リフォーム推進協会に継承)を立ち上げ、「命を守るリフォーム」を日本中に普及させるのだと意気込んでいました。その覚悟のもと、地震が起きるたびに現地に赴いて、視察を繰り返していました。その中で分かったことは、阪神淡路大震災や新潟県中越地震で倒れた家は、倒れるべくして倒れているのです。

一般的には自然災害だというのですが、建築を手掛ける者としては、人災に近いとも感じるのです。ふつふつと感情が高ぶったことを覚えています。そして、あらゆるイベントや講演会で、「木造住宅の耐震化」を訴えていたのですが、数年たってもなかなか進まない。進まない理由は、「お客様と会う最前線の工務店や住宅会社が耐震診断をできない」からだとわかったのです。そこで、耐震診断を理解し、前線の人ができるようにする「勉強の場」としてつくったのが、この住構協でした。住構協の勉強会では、繰り返し「命を守るリフォーム」を言い続けていました。「ビジョンは明確なっているので、パッションをもって、行動しよう、そして、耐震化の重要性をお客様に伝えよう」と。

「物事を成功させるには、情熱をもってあたること」と、いろいろな本に書いてありますが、まったくその通りだと思います。しかし、情熱には強弱があるのも確かです。私は、より強い情熱を起こさせるには、「ビジョンが明確になっている」ことが必須ではないかと思っています。「世のため、人のため」につながる絵が描けるかどうかです。この「絵を描くこと」がなかなか難しいのですが、分かりやすいビジョンをつくらなければ、人を巻き込むこともできないと感じています。どのような組織、企業でも、「理念」「方針」「中期計画」といったもので示してくれます。個人の人生でも、趣味の世界でも、ビジョンを持つと強い情熱が湧いてきます。そして、もっとも大事なことが「アクション」ですよね。これができなければ、絵に描いた餅と言われます。「失敗を恐れずに行動することが、次の行動をより正確にしていく」といった考え方が、自らの行動を促します。明確なビジョンとより強いパッションが、「じっとしていられない」と後押しすることも確かなのです。

上記に書いていることは、私が言うまでもなく、偉人の本を読むと必ず出てきますよね。「熱くなった」という感情を、ある程度年齢を重ねた人は、一度や二度は経験しているのではないかと思うのです。しかし、「仕事となるとない」「熱くなることを継続できない」などの壁にあたることもあります。それも事実です。私も学生時代、結婚、子育てなどで、何度も「あれだけ情熱を持って取り組んでいたのに、今は・・・」を経験しています。そんな中から、最後に必要なことは「ハクション」、いわゆる伝染させることだと感じているのです。ビジョンに共鳴していただける仲間をいかに集めるか、そのような活動をどこまでやっていくのか、それができれば、仕事の中でも熱くなれるし、熱い気持ちを継続もできると考えています。残念ながら、住構協時代はこれが不十分であったと反省しています。自分だけが熱く燃え、巻き込むことができなかったのです。

このたび、木耐協(日本木造住宅耐震事業者協同組合)の技術顧問として、木造住宅の耐震化に再度かかわることになりました。20年前に戻って、「命を守るリフォーム」を進めていかなければならないと熱くなっています。残念なことに、命を守るといったリフォームが行われるどころか、外壁や屋根だけのリフォーム、水周りだけのリフォームが相変わらず強いのです。リフォーム時がもっとも耐震化を行うチャンスですが、カバー工法や塗装で見かけだけのリフォームになっています。それらの会社を排除するのではなく、耐震化の能力を身に着けさせることで「命を守るリフォーム」が実現できると考えています。旧耐震だけでなく、1981年~2000年に建築された「81-00住宅」が地震に強い家に変われば、地震大国日本の社会基盤の強靭化がスピーディになることは間違いないのです。絵は描けていますので、あとはアクションとハクションです。私も今年起業したこともあり、優先順位を自由に付けられますから、この問題を優先的に取り組み、これを読んでいる皆様を巻き込んでいきたいと思っています。

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