地域に入り込む

定年退職後に起業したこともあり、また、単身赴任が長く、週末だけ地元にいるような生活が続いていたことから、地域に受け入れていただくためにはこれからどうすればよいのか、この一年考えていました。今までは、圧倒的に企業での居場所が人生に影響しており、それで十分に居心地が良かった。しかし、定年退職後は、居場所なく生きていく男性が多いのも確かです。だからこそ、地域デビューをできる限り早くしたいと思っていました。

数十年前から「神輿の担ぎ手=禰宜(ねぎ)」に参加しており、それがきっかけで、今年から「区の役員」になったのです。地域のためのボランティアは数多く、区長を筆頭に数十人が活躍しています。それ以外にも、福祉協議会や青年会、子供会、敬老会などが存在しています。区費と東金市の補助金から、地域の安全、福祉、イベントなどを企画して、それを運営しているのです。ゴミ拾いや体育祭、お祭り、福祉バザー、研修旅行、敬老イベントなどが具体的な内容です。

月に1度は何らかのイベントがあり、そのために5日から6日は打ち合わせの時間を持つことになっています。これを地域の役員がボランティアで行っており、同じようなメンバーが立場を変えながら行っているのが実態です。こうした役員は、昔は農業や自営業者、役所勤めの人などが担っていましたが、今はほとんどがサラリーマンの定年退職者で、60歳をはるかに超えた人たちが中心になっています。高齢者でも普段のイベントは何とかこなしていけますが、もしもの時の人助けや避難所の運営などを考えると非常に不安を感じます。しかし、このような人たちのおかげで地域が安定して存在していることは確かであり、地域コミュニケーションがわずかながら残っているのです。

住民たちのボランティア精神がなくなると、荒れた町内になり、住民がどんどん離れていき、限界集落になってしまいます。結果、不動産の価値は急落、これも空き家が増える要素の一つです。地域に入り込むと人間関係が非常に面倒だし、裏方が多く、一般の人から感謝される場面もありません。昔ながらの付き合いで仕方なくやっている人が多く、人の良さだけに支えられているように見えるのです。イベントも本当に必要なものなのか、住民が喜ぶのか、といった疑問も立つのです。それでも、ここで「生涯を暮らすのだ」という気持ちが強いので、地域に入り込むのと入り込まないのでは、居心地が違うような気がするのです。今は、まだ地域の人の役に立っているか疑問ですが、少しでも役に立つことで、この地域で楽しい時間が持てるようになっていきたいのです。

地域に根付く工務店様は、昔から地域になくてはならない存在でした。イベントの準備も、町内の清掃も、工務店様の道具なくして進まない。防災の観点でも頼りになった。公民館や神社も、公的な建物の修繕は地元の工務店様が請け負った。地域と工務店様は、いわば一蓮托生です。それが今では、分譲会社やハウスメーカーの営業所、不動産仲介会社が目立っており、リフォームや修繕も設備会社や外装会社が行っています。このような会社は地域の役員にもならないし、地域のイベントにも参加しません。そうこうしているうちに転勤してしまう。一方、今の工務店様は、看板も出さず、ホームページもなく、告知活動もしないからか、消費者から見ると地元工務店を探すことも容易ではありません。

日本のほとんどのエリアにおいて、半数以上の住民がこの40年間に移住してきた人たちです。子どもが小さいうちはまだいいが、大きくなると地域から離れはじめ、そして定年退職後に移り住んでくるケースが多いから、どうしても高齢者の役員が多くなるのでしょう。やはり、転勤を伴うような大手サラリーマンではなく、地域に根差した会社か、自営業者が増えていく日本社会にしていくことが、地域の活性化につながると思うのです。工務店様が地域に支持される社会をつくっていきたいと思います。

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