本格的な夏対策を
今年は、6月中旬から猛暑日を記録する地域が続出するほど、暑い梅雨を経験したのではないでしょうか。ここ数年、過酷な夏が当たり前になってきています。今ほど暑くなかったとしても、エアコンのない時代はどのように過ごしていたのでしょうか。私の子ども時代は、暑いとは思っていたものの、当然エアコンもないので簡単な扇風機と団扇だけで過ごしていました。午前中は海で泳ぎ、昼からは日陰のある神社の境内で野球を楽しんで、何とか暑い夏を過ごすことができていたのです。大学時代は、暑い暑いと言いながら、濡れタオルと扇風機でクリアしていました。結婚してからは、リビングのエアコンに頼り、仕事の住宅設計で意識したのは、住宅プラン上で窓による南北の風の流れをつくることでした。今は、新築住宅であれば、断熱性能を上げ、換気設計をしっかり行い、一部屋だけでなく、全ての空間を快適にすることです。しかし、既存住宅の場合は、断熱、気密、換気も不十分と分かってはいるものの、一部屋冷房で我慢するか、自宅から退避することを考えてしまいます。

断熱が不十分な住宅を持っている人は、50歳以上の世帯主がほとんどです。「あと何年もない」と簡単に考え、「将来は誰にも住んでもらえない」と勝手に判断していることも多い。結果、改修も先延ばしにして、自らに我慢を強要しているのです。本当に資金がなく、年金だけで暮らしている人もいるでしょうが、ほとんどの人が、資金的には改修をできないことはないのですが、残念ながら行動をしないのです。

自宅を快適に改修しないのであれば、2拠点居住をお勧めします。例えば、東京から90分程度で行ける千葉県勝浦市であれば、酷暑と言われる時期でも35度以上になることはなく、朝夕はエアコン要らずです。家を二つ持つことができないのであれば、借りても良い。増えつつある民泊に長期居住でもいいし、何人かでシェアハウスとして借りても良い。とにかく涼しい場所で過ごすことをお勧めしたいのです。過疎化した地方ほど、海や山があり、涼しい場所が多く存在しているからです。

生活スタイルを変えるのも良いですね。早起きして、仕事を日が昇るうちに終わらせるということです。農業や漁業と同じように、現場の施工時間も変えるといい。事務仕事も早朝から出勤して、昼休憩を3時間ほど取ってはどうでしょうか。町のクリニックなどでは実施しています。リモートでの打ち合わせが可能になってきた今だからこそ変え時ではないでしょうか。地球温暖化、異常気象と言って嘆いていても解決できません。時代の環境に合わせ、私たちが変わっていく方法があると思っています。もちろん、温暖化を食い止めることは必要だと思うのですが、住まいのハードと住まい方のソフト、移動方法、生活スタイルを変えていくだけでも大きな効果があるのではないでしょうか。

自宅の滞在時間を調べるとよくわかります。60歳以下の男性の自宅にいる時間の平均は、12~14時間ですが、60歳を超えると18~20時間の人が最も多くなります。女性は16~18時間が、18~20時間になります。高齢になると睡眠時間が短くなることを考えると、起きている時間は急激に増えるのです。私も定年退職から自営に変わったこともあり、通勤時間から解放され、自宅滞在の起きている時間は、3倍程度に増えたのです。その時間をどのように過ごすのか、快適な空間を手に入れるのか、暑さ寒さを我慢する時間を増やしてしまうのか。資産はそれなりに持っているものの、収入が急激に減少する時期であり、大きな資金を使うことにためらうこともあります。男性が決定権を持っていると、どうしても快適住宅への改修をすることに決断できないこともあるでしょう。年齢を重ねれば重ねるほど、決断が鈍るという現象は致し方ないので、定年退職の時期に快適住宅への改修に動くことをお勧めします。築34年の事務所兼自宅を改修した「耐震・断熱改修体験館」に来て感じてみませんか。
