買取再販ビジネスの普及
数年後、マンション業界は、買取再販ビジネスの販売戸数が新築分譲を超える時代がきますね。というのは、新築を建てる優良な土地が買えなくなってきていること、資材価格の高騰、働き方改革で施工価格が高値止まりをしており、下がることはないと思われるからです。新築分譲の販売価格は、圧倒的に購入能力を超えた価格帯になってきています。一方、中古のマンションは、2000年以降であれば基本性能を確保されており、間取りや水回りなどの限られたリノベーションで済ませることで施工しやすいため、現在の施工コストもそれほど影響しません。消費者にとっても、不動産仲介と違い、専門企業が売主となるため、購入後の責任の所在が明確で、相談もしやすい環境になりつつあります。

しかし、既存住宅の大半を占めるのは、圧倒的に一戸建住宅であり、2000年以前に建築された住宅が多く存在しています。残念ながら、買取再販ビジネスはまだまだ一戸建住宅には普及していないのです。その理由は二つあり、一つは、郊外の団地や地方都市に存在し、現在の若者からすると住環境が魅力的でないことがあります。もう一つは、売り主となる企業は、低い耐震性や断熱性をリフォームし、新築と同程度の性能にリノベーションしたうえで販売したいのですが、これには想像以上にコストがかかってしまうのです。

それでも、買取再販ビジネスを一戸建住宅にも普及させていかなければならないと思っています。駅前のマンションに住みたい老夫婦が増え、相続案件も急増するでしょう。今後、既存の一戸建住宅の供給量は明らかに増えていくのです。どのように利活用させていくのがよいのか、あるいは、単純に解体してしまえばよいのでしょうか。

住宅用途での利活用であれば、二拠点居住を推進することだと考えています。法律を整備して、週末と週中の生活スタイルを変える、季節で変えるのも良いですね。実践している人たちが増えていることもあり、良い兆候ですが、国民のためにも、国策として行うことを願っています。固定資産税や相続税などの優遇や、太陽光発電の自家消費を二つの拠点で認める(田舎の家で発電したら、都会の自宅で消費できるなど)、もしもの時にみなし避難所としての優遇処置など、できることはたくさんあると思うのです。

もう一つは、建物の用途を変えられるようにすることだと考えています。インバンド向けのゲストハウスやグループホームは動き始めていますが、集会所、店舗、事務所、小さな工場などの用途も認めていくことが、今後、必要だと思うのです。買取再販事業者が増え、取引が当たり前になれば、競争が生まれ、よりよい物件が増えていきます。結果、選択肢が増えることは、消費者にとってもメリットになると考えています。人口減少、成熟社会に突入した日本の不動産業界も、何が何でも新築住宅でなければ購入しないという市場は、終わりを迎えさせなければならい時期に来ています。

しかし、課題が多いことも確かです。売りっぱなし、保証も不十分な不動産が出回ること、購入者同士の生活習慣が違いすぎてギクシャクしたコミュニティーが出来上がる可能性もあります。新築分譲以上に購入者が幅広くなり、多様性が出てくるでしょう。それでも、車や家電、本、服など、たくさんの業界が先駆けて中古商品を提供しています。購入価格が違い、何度も決断ができないとはいいますが、ここ十数年は品質の良い新築住宅(2000年制定の品質確保促進法などにより)が提供されており、リサイクルできないわけがないと信じています。供給が増えてきた長期優良住宅の認定は、長く利用することを前提としていますので、この認定住宅が流通する時代が、そこまで迫っていることもあります。住宅ローンの優遇、リフォームの履歴など、新築に負けない安心感を住まいの価値に付けられるはずです。国が推進してきたということもあり、新しい制度もつくるのではとも考えています。日本の住宅事情、住宅行政の方向性、資産価値のアップなど、買取再販ビジネスをやっていかなければならないと思っています。