新築住宅着工数から、今後を考える

30年前、新設住宅着工戸数は150万戸を超えていました。ところが、今や80万戸を割り込み、今後60万戸まで落ち込むとも言われています。一方、空き家、空室は驚くほど急増しています。賃貸住宅や分譲マンションは減少しているものの、持ち家や戸建て分譲住宅ほど急激の落ち込みではない。なぜでしょうか。劣化性能の違いなのか、建てた時期の問題なのか、手に入れる方法(ローン)なのか、消費者の嗜好なのか。

私の住む千葉県東金市は、高度成長期から人口増加が続いていましたが、20年前から人口減少が始まり、6.2万人から5.7万人に減少しています。当然、空き家も増加していますが、駅の近くや区画整理地内では、分譲住宅地用に5区画から10区画前後の造成工事が切れることなく行われています。中心地から離れた住まいは高齢者が多く、住宅の空き家が目立ち始め、中心地には若い夫婦が分譲住宅を購入しています。大都市だけでなく小さな都市でも、高齢者は不便、古い住宅で我慢をして、若い夫婦が便利で、性能が高い住宅に住んでいるのです。それは、戦後から続く現象であり、何年たっても状況は変わらないですね。高齢者に快適な住まいを提供できないのでしょうか。小さくても便利な住まいに住んでいただきたい。確かに地域コミュニティはあるかもしれませんが、同じ市内であれば大きく崩れることはないのではないでしょうか。この動きは、一定量あり続けると思います。

買取再販による中古売買ビジネスは、マンションにおいて多数行われるようになって来ました。リノベーションの方法も確立しつつありますので、今後、大きく伸びていくと思われます。一方、「戸建ての買取再販」となると、これまでは限られた企業(専門不動産業)しか取り扱ってきませんでしたが、今は、ほとんどのハウスメーカーや大手不動産業者が名乗りを上げてきています。単純なリフォーム事業や仲介業よりも、買い取って大きな売上・利益を確保できるからです。消費者との取引は、今後、建設請負業ではなく、不動産売買業となりつつあります。少し前までは、相続で発生した土地建物を「解体」して、「土地の分割」を行い、分譲地や分譲住宅にしていたのですが、建物の程度が良い場合や土地を分割できるほどの大きさがないケースが増えているのです。特に特殊な建物(ログハウスやプレハブなど)は、他社では扱いにくいので、建築した会社へ話が持ち込まれることが多くなっています。結果、郊外につくられた大規模団地や地方都市ほどこうしたビジネスが増えると考えています。

私たち工務店事業者はこれまで、新築住宅の請負やリフォームビジネスでも最終消費者への営業を中心に行ってきました。現場見学会、ホームページ、ニュースレター、チラシなどで告知をして、モデルハウスや事務所へ案内することから、商談に入っていました。しかし、地方になればなるほど、これを期待できるお客様が減少をしていることも事実です。残念ながら、今までの集客方法や商談では、お客様を増やすことができないのです。だからと言って、大手企業と同じ方法では、建築の情報が入ってこないことも確かなのです。今後は、BtoBビジネスへ広げていくべきと考えています。不動産仲介会社とネットワークを組み、店舗、介護施設、ゲストハウスなどを運営している企業への営業展開です。「小さな物件、小さなビジネス」を応援していくものです。例えば、ロケーションの良い空き家(不動産会社・税理士)をリノベーション(設計事務所・工務店)して、ゲストハウス(運営会社)を投資家(仲介会社)に持っていただき、リネンは地元の主婦(工務店)にお願いする。( )の中の企業とネットワークをつくることでなければビジネスモデルが成り立たない。店舗や介護施設も同じスキームです。

工務店事業は、住宅着工戸数に左右されない建築ビジネスを手掛けていかないと、地域に存在価値として認めてもらえない時代に突入し始めています。リフォーム事業に関しても、最終消費者が高齢化し、意欲を持った人が減少している状況では、期待できるビジネスではないのです。だからこそ、新しいお客様を探す方法から、行動に変えていかなければならないと思うのです。

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