商品開発と販売

新築住宅を手掛けるならば、新商品開発を行っていかなければなりません。いわゆる「コンセプト、設計ルール、仕様設備、価格、施工システム、アフターサービス」などを、一つの商品として組み込むことです。しかし、時代の流れ、住宅環境などの外部要因だけでなく、人材や技術力などの内部要因も大きく影響します。それでも「商品開発」を続けるのは、商品が売れなければ会社は廃業に追い込まれることになるからです。

30年以上前、経営コンサルタントの伊吹卓氏は、「ヒット率100%の商品開発」(廃版)の中で、「商品が売れないのは、売れない理由がある。それは、「売れない病気」症候群にかかっているのであり、原因を見つけ、治療すれば、必ず売れるのである」と述べています。「売れない病」症候群とは、①売れるかどうか分からないものだ、②トレンドをつかめない、③お客様の気持ちがつかめない、④不透明な時代だ、⑤今は売れない時代だ、⑥人気は分からないものだ、⑦なにが売れるかわからない、といった気持ちを持つことであり、残念なことに、この「売れない病」症候群に罹った売れる商品開発ができない人たちが、商品開発を担当していることが多いのです。

伊吹氏は、この解決策は「苦情法」と「着眼法」というたった二つの秘策だといいます。苦情法は、お客様の苦情をしっかり聴いて、素直に反省、改善することです。メーカーなら売れるようになり、小売なら繁盛するようになります。着眼法は、良いことに眼をつけて、素直に見習おうという姿勢を続けていくというものです。しかし、その当たり前のことを99%の人が失敗をします。原因も処方箋も分かっていても、病気をつくっているのは人間であるということを忘れてしまい、商品だけに目がいってしまうのです。

苦情法の実践には、苦情が「いやなもの」といった固定観念があり、苦情を聞くと腹が立つ、恥ずかしい、叱られる、無能と思われる、人間として否定されているという思いが先にたってしまいます。ですから、一般的に優秀な人間を配置しないケースが多い。お客様も、嫌われる、人間関係を崩したくないといった遠慮から96%は、言わないというデータがあります。苦情は非常に貴重であり、販売経営術の鍵を握っているということを理解し、社長自ら取り組むことが「売れる商品」の第一歩なのです。松下幸之助氏は、工場の守衛さんにまでお客様の苦情を引き出すことを徹底させていたといいます。そして、販売店からの苦情をいかに満足に変えられるかと日々工夫していたからこそ、日本一の販売店グループをつくりあげられたのです。

着眼法は、売れているもの、行列ができているものを素直に認め、受け容れることです。一年でも二年でも見続けると、気づきがある。なぜ売れるのか、なぜ行列ができるのか。売れる理由は商品ではないのです、お客様の行動であり、感動であり、喜んでいる姿に気づくかということなのです。

伊吹さんは、売れる商品をつくるということは、行動すること、練習することだといいます。イチロー選手や大谷選手も素振りを毎日するから打てる、三苫選手や久保選手もサッカーボールを触らない日はない。ジャイアンツの川上哲治は、毎日ボールを見続けた結果、最後にはボールが止まって見えたといいます。経営も販売も、商品開発も体で覚えろ、理屈ではない。体が自然と動く、頭が自然と思考するには、何度も何度も繰り返し経験することだといいます。現場に行け、聞け、見ろ、実践しろ、それが売れる商品をつくり、売れる人間になる。伊吹氏が主催するヒット塾という研修は、机上ではなく、現場に出向いて経験させる研修であり、半年後には必ずヒット商品を出しつづけています。その一つがアサヒスーパードライなのです。

伊吹氏の本を読み、会って話を聞くと、商品開発と販売は一体なのです。少し会社が大きくなると、営業、開発、製造と部門も人も分かれることが多く、一体化することが不可能だと思ってしまうものです。その点、私たち工務店は、社長がすべてを行なうことができる。これがもっともヒット商品を出す可能性が高いのです。苦情法と着眼法を実践することが、お客様の満足を与え、買っていただける商品を持つことができるのではないでしょうか。

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