新築とリフォームの商材として

住宅業界、特に戸建て住宅を生業にして43年になります。戸建て分譲住宅の設計担当から、監督、責任者、そして営業責任者として歩んできました。そのたびに、商品づくりに悩み、提案をし続けてきました。また、住宅会社支援に10年以上取り組んできたこともあり、いつも商品はどうなるのだろうか、どうすべきなのかと考えてきました。

木造在来工法では、30年くらい前にプレカットという躯体加工のシステムが導入されました。2X4工法が普及し始め、それまでは大工さんによって変わってしまった強度や施工精度、スピードなどが在来工法にも求められるようになってきました。当時は、大工さんの大反対(手間賃のダウン)にあったこと、また、加工ミスによって現場トラブルが絶え間なく起きるなど、上手くいかなかった。しかし、プレカット機械のレベルアップ、CADや工場の努力、配送の効率化などによって大きく改善され、今では在来工法の95%がプレカット加工になっている。

ユニットバスの普及も約35年前です。在来浴室(タイルと浴槽)と比較して、価格は2倍以上、見た目は貧相、ホテルやアパートでは許されても注文住宅での普及は見込めないと言われていました。しかし、お客様のクレーム(排水、水漏れ、カビ発生など)は格段に少なく、今では99%がユニットバスです。

現在の戸建住宅において、上記の仕様、設備と同じように感じるのが、「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」です。省エネ、省電力、創エネがスピードをもって進化しており、結果、快適、お得、長寿命を建築主が得られると思われます。間取りや外観デザインなども「ZEH」に向いた設計が求められるようになるでしょう。数年後には、新築住宅として90%以上が「ZEH」の性能を持つことになると考えています。

もう一つは、「制震工法」ではないでしょうか。躯体が損傷を受けるたび、耐震性能は劣化することになります。そのため、耐震だけでは、「繰り返しの揺れ」に対応しにくいのです。建物が存在する何十年の期間に、地震は何度も襲ってきます。固有周期を変える「免震」がありますが、木造住宅は軽量であり、性能が十分に発揮できないこと、そして価格がべらぼうに高い。そこで、地震エネルギーを吸収し、躯体に損傷を与えにくい「制震工法」が、価格も安く、施工も簡単となると、一気に普及すると考えています。現在は、住宅業界で「制震性能基準」が曖昧となっていますが、今年中に統一ルールができるようです。

リフォーム事業においては、水回り四点セット(キッチン、浴室、洗面、トイレ)と外壁修繕は、永遠にヒット商品となっていくでしょう。水回りはどんどん進化しており、20年に一度は交換、リフォームをしたくなります。食洗器、魔法瓶浴槽、ウオシュレットは100%近くまで普及するでしょう。もはや家電の一部であり、テレビやエアコン、冷蔵庫と同じ扱いですよね。

いつも取り残されて残念なのが、上記に書いた二つの性能、快適さと耐震性能です。修繕や設備、見た目のきれいさが優先され、なかなか普及していかない。しかし、既存住宅の存在数が圧倒的に多いのも事実です。それらの性能が既存住宅に普及しなければ、住まわれているお客様が取り残されるということです。このままでは、新築住宅と既存住宅で、どんどん差が広がっていくでしょう。耐震改修や断熱改修などに関連する商材は、もっと注目されなければならない。性能向上の一部である、耐震補強部材、後付けの内窓、高効率給湯器、太陽光発電システム、熱交換換気システムだけでも普及させなければならない。

住宅仕様・設備は、進化のスピードが目まぐるしいのは、あらゆる業界と同じで、当然のことなのです。しかし、50年以上にわたって利活用する住宅の基本性能は、消費財ではなく資産だという意識を持っており、社会資本の一部だと思っています。家は「個人の資産」という前に、耐震化は日本の社会基盤の強靭化の一部であり、省エネ化は環境問題に大きく影響します。多少補助金はありますが、もっと、もっと手厚くする必要があると思います。例えば、「耐震・省エネ化」費用には、消費税を免税にするくらいの覚悟を持って推進すべきだと思うのです。

今後、上記のような商材やシステムが普及すると考えていますが、どんどん進化した結果、日本国内だけでなく、世界中に普及させていくべきではないかと思っています。日本独特の住生活文化は、清潔、健康、長寿命などに最適であり、木造化、制震、熱交換換気システム、IH、ウオシュレット、魔法瓶浴槽といった商材がフィットしますから。

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