性能アップリフォームの重要性

今年度に入ってから、予想以上に新設住宅着工数の減少が進んでいます。基準法の改正もあり、申請方法の変更や断熱性能の義務付けも影響して、建築価格が高止まりしていることが理由の一つだと思われます。今後、新築の建築費用は下がるのかというと、残念ながら、資材の高騰、職人不足、働き方改革などからそのような期待はできないでしょう。また、日本には、築30年から築40年程度の住宅が多く存在しており、建て替えるよりも「利活用」「リノベーション」を考えるのは、自然な考え方です。実際、マンション業界を見てみると、新築販売戸数よりも中古再生の販売戸数が上回るほど、急増しています。

81-00住宅(1981年から2000年に建築)は、2000年以降に建築した住宅の性能に比べ、残念ながら劣っています。特に、耐震性と断熱性といった基本性能が不十分なため、毎日生活する中で、不満が残ってしまいます。わかっていても、水回りのリフォームや、屋根と外壁の塗り直しなどが優先されるのは、消費者が「見た目重視」の風潮が残っていることもあるのでしょうが、相変わらず、プロである住宅リフォーム会社が、修繕工事の延長線のリフォーム提案しかできていないことが、要因の一つです。建築的な知識や技術力を必要としない、元塗装会社や設備会社がリフォーム会社を経営していることもあるでしょう。

今後、急増するのが、買取再生住宅や、住宅以外への用途変更をするリノベーションビジネスです。発注者が消費者からプロユーザーに変わり、リフォーム工事に求める内容が大幅に変わると思われます。お客様の属性が変わると、集客方法や提案内容、価格も大きく変わるのは言うまでもありません。例えば、消費者向けの価格重視の折り込みチラシ、SNSなどの媒体では、上記のプロユーザーのお客様は振り向いてくれないのです。それでは、どうすればいいのでしょうか。その答えの一つが、「性能アップリフォーム」なのです。発注者であるプロユーザーが増えれば増えるほど、他社との差別化を要求してきます。いずれは、新築で普及しはじめたZEHや制震住宅といった性能を求めるようになるはずです。住宅リフォーム会社は、そのような技術力を持つことが要求されると思うのです。それが、他のリフォーム会社との差別化にもなり、ブルーオーシャンでビジネスが可能になるのです。

まず、耐震技術力を身に付けるには、日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)への加入を推奨します。阪神淡路大震災から、木造住宅の耐震性能アップに特化して、勉強会や研修を続けています。耐震診断・補強提案から補強工事まで、組合員同士で切磋琢磨しているのです。もう一つが省エネに関する性能アップです。断熱改修だけでなく、住まい全体の換気設計です。熱交換型の換気システムや通風の在り方などが求められるのです。これは、断熱や窓、換気機械のメーカーの知識を借りながら、一棟まるごと設計する力が必要です。「これだ」といったリフォームの仕組みがまだ構築できていないのが事実です。だからこそ、省エネ住宅にリフォームした建物を見学しながら、独自にノウハウを作り上げることをお勧めします。私の自宅兼事務所は築35年になりますが、数年前に設計、施工して「耐震・断熱改修体験館」として、無料公開していますので、参考にしていただければと思います。

性能アップの改修技術の習得と同時に、補助金申請の業務支援力も重要です。耐震改修や省エネ改修住宅は、各行政の補助金制度が充実しています。消費者、プロユーザーにしても活用できるものは、活用すべきであり、行政側にも利用しやすい仕組みに変えてほしいものです。将来リスクの回避ができる、一つの投資と考えてほしいのです。もしもの時に、避難所や仮設住宅が格段と減少することになるからです。省エネ住宅であれば、健康寿命が延び、社会保障費用が減少することが証明されています。住宅リフォームするなら「命を守り、健康に寄与する性能アップリフォーム」を行っていきましょう。

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